神戸の摩耶山で坐禅とイタリアン精進料理(3ページ目)

精進料理は、
イタリア料理とは相容れないもの？

オテル・ド・摩耶の精進風イタリアンのメニュー。さて、どんな料理が出てくるのか

そもそも精進料理とはいかなるものかというお話からはじめましょう。もともとは僧侶が修業の一環として作るもので、簡単に言うと、肉、魚、卵などの動物性食材を使わない料理です。

乳製品については、お釈迦様が修行で体が弱ったときに、村の娘から、牛乳で作ったおかゆをもらって体力と気力を回復したという話から、使ってもよいとする僧侶の方もいますが、一般には、やはりあまり使われないようです。

そしてもうひとつ大切なのが、五葷（ごくん）です。香りの強い「ネギ・ラッキョウ・ニンニク・アサツキ・ニラ」の五つの野菜を使ってはいけないというものです。陰陽五行の考え方で、その五つは、人の臓器や精神などに影響を与え、修行のさまたげになると考えられているからです。

●日本の精進料理についての奥深い情報はこちらをご参照ください

イタリア料理に欠かせないはずの、肉、魚、チーズ、バター、ニンニクが使えない！
そんなオキテがあっては、あまり美味しい料理が作れないんじゃないの？？？

心配ご無用！
オテル・ド・摩耶のシェフは天才なのだ

素敵な精進イタリアンを考案した奥野シェフ

そのような厳しいオキテをものともせず、精進料理とイタリアンを見事に融合したメニューを作り上げたのは、総支配人でシェフの奥野俊彦さんです。

はじめはお隣の天上寺の僧侶の方から、「精進料理をやってくれないか」という申し出があり、どうしたものかと困ったそうです。しかし、イタリアには野菜料理やパスタなど穀物の料理もある、ということで、いろいろ工夫して、とても美味しく食べ応えもあるコースが考案されました。一見、精進料理には見えない派手さもあって、目にも楽しく、食べるとまた驚きがっ！

野菜たっぷりの前菜と
きのこのパスタ

野菜ときのこたっぷりの前菜とパスタ

まず、グリーンアスパラ、ズッキーニ、かぼちゃ、つるむらさきなどの野菜を使った前菜が出ます。これに関しては、オリーブオイル、バルサミコソースなどの味付けなので、精進料理のオキテは軽くクリア！きのこのパスタも、ニンニクやチーズを使っていないのに、こくのあるお味で、とっても美味しいです。

こんなお料理だと、やっぱりワインが恋しくなります。お寺ではお酒を飲むのも禁止とされていますが、たまに「般若湯（はんにゃとう）」などと呼んで少したしなむ僧侶の方もいる、と聞き及んでおります。ってことで、ま、オッケーってことにしちゃいましょう。（内緒の話です。よそで言っちゃダメよ）

もどき料理もあるのだ

子牛のカツレツにしか見えないが、実はナス。これがすごく美味だった

精進料理では、もどき料理もよくあります。つまり、肉や魚に見せかけた料理のことで、お寺によっては、遊び感覚でいろいろと楽しい工夫もあったりします。こちらでは、なんと、子牛のカツレツにそっくりなナスのカツレツがメイン料理となっていました。

見た目も楽しいのですが、食べてみると、これが、軽くてやわらかくてすごく美味。奥野シェフのお話によると、「衣をつけるときに溶き卵を使えないので、水を使っている」とのこと。それでもこんなにきれいに衣がつくのは、さすがプロですね。

デザートも安心のローカロリー

豆乳ジェラートはタピオカがアクセント

デザートは豆乳のジェラートです。普通のコース料理をいただく際、「デザートは食べたいけどカロリーが心配」と思うものですが、これなら安心。メインのカツレツの後でさっぱり食べられて、ああ、美味しかった。精進料理というだけでなく、ダイエット中の方も満足できる素敵なコースを考案した奥野シェフは、やっぱり天才です。

次のページは、天上寺での真言宗式の坐禅体験。
これは厳密に言えば坐禅とは少し違う、阿息観という瞑想法です。