高麗八萬大蔵経
(こうらいはちまんだいぞうきょう)
とはなんぞや?

難しい漢字の耳慣れない名前です。まずは、ひとつひとつの言葉について説明しましょう。高麗とは、10世紀から14世紀まで朝鮮半島を支配していた国の名前です。八萬とは、何がが八万あるということで、その何かについては、あとで説明します。では、大蔵経とは何か。仏教の経典は経、律、論で構成されており、これらを大蔵経と言います。つまり、大蔵経は、「仏様のあらゆるお言葉が体系的に集大成すること」です。要するに、これは、お経の名前のひとつです。

何が八万あるのか?

これが「高麗八萬大蔵経」です。これをどう使うのかわかりますか?
昔は大量に文書を印刷する技術はなかったので、お経も手で書き写すしかありませんでした。しかし、高麗八萬大蔵経は、枚数は81340枚で、経典にして6791巻もある壮大なものです。実は、この81340枚という枚数が八萬という数字で表されているのです。なにせ、仏様のあらゆる言葉の集大成なので、それだけ膨大な枚数が必要です。これを、一枚一枚筆で書き写すのは、たいへんな作業です。そのため、仏教の世界では、仏典(お経)は、仏像と同じように大切にされます。

高麗八萬大蔵経があれば
書き写す必要はない

高麗八萬大蔵経という言葉には、実は二つの意味があります。ひとつは、お経そのものを指し、もうひとつは、そのお経を印刷するための版木という意味です。版木があれば、書き写すよりはるかに短い時間で、高麗八萬大蔵経(お経の方ね)を印刷することができます。海印寺には、その八万枚以上のお経の版木が保存されているのです。これはある意味、お経そのものよりも貴重な文化財と言えるため、世界遺産に指定されているのです。

いつ、誰が、
何のために作ったのか

八万枚以上の版木は、1236年から16年の歳月をかけて作られました。誰が作ったか。それはきっと、無数の職人さんでしょう。何のために? もちろん、お経を印刷するためだろうとお思いでしょうが、それだけでなく、実はもっと深い意味もあります。

ことの起こりは、1011年。契丹という国が高麗に攻め込んできました。その際、国家防衛を祈願して、最初の八萬大蔵経が作られました。お経を作るのは大仕事ですから、なんらかの祈願のために行われることが多かったので。ましてや八万もある版木を彫るのは、国を挙げての大事業となります。しかし、そのときの版木は火災で焼失してしまいました。

1236年に、今度は元が、高麗に攻め込んできました。日本でも、そのしばらくあとに元寇がありましたよね。ご存知のように、当時元は、世界征服をもくろんで、周辺国を攻めまくっていたのです。その際、高麗の皇帝が、再び、八萬大経蔵の製作を指示しました。これが、現在まで伝わる高麗八萬大蔵経です。

建物内には入れないが、窓の隙間から、ぎっしり並ぶ版木が見える


版木はどうやって作ったのか

八万もある版木は、横68cm、縦24.5cm、厚さ3cm、重さ約3.2kgの四角形の板です。両端にはよじれないように板を付け、角は銅板で補強し、全面に漆が塗ってあります。材料は白樺、山桜などで、3年間海水に浸した後、経板の大きさに切り、塩水で煮て充分に陰干しした後、かんなをかけて、文字を彫刻しました。一度煮てやわらかくして乾燥することで、木が曲がるのを防ぐことができるようです。

何百年も劣化せず、
完全に保存されたのはなぜか

それは、保存する建物の構造が優れているから。八萬大蔵経を納め保管するために建てられた蔵経板殿は、修多羅蔵と法宝殿の二棟の建物から構成されています。床は木炭と石灰と塩を重ねて盛り上げたもので、版木の保存を第一に考えた工法が採られています。多湿時には湿気を吸収し、乾燥時には湿気を建物内に放つ事で、いつでも一定した湿度を保つように考案されています。木は湿気の変化に弱く、微妙な変化で割れてしまったりするものなので。この建物は、1448年の建立。そのころから、このように合理的な保存法が知られていたとは、驚きですね。

八萬大経蔵を収めた建物。機能だけでなく、形も美しい


海印寺自体は、高麗時代より前の新羅時代に建てられたもので、もっと語るべき歴史はたくさんあるのですが、とりあえず、今回の記事はここまで。今後も、韓国のテンプルスティを中心に、お寺巡りの情報を定期的に掲載していきますので、お楽しみに。

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