寺・神社/宿坊に泊まる

宿坊に泊まる韓国旅 世界遺産海印寺後編(3ページ目)

海印寺には、宿泊施設もあり、一泊して、韓国独特の仏教文化を体験することができます。また、この寺には、世界遺産に指定された貴重な文化遺産、高麗八萬大蔵経もあります。

吉田 さらさ

執筆者:吉田 さらさ

寺・神社ガイド


韓国の人は、日本人より信仰心が厚い

これは、浮石寺の近くのリンゴ園。梨にせよリンゴにせよ、韓国の果物は、果肉がぎゅっと詰まっていて美味しい
そこへ、若くてとても奇麗な女性がやってきました。先ほど、お堂でのお勤めで、とても熱心にお参りをしていた方で、韓国のお寺の信徒さんが着る衣服を着ていらっしゃいます。その方は梨を剥いて、わたしたちにも分けてくださいました。韓国の梨は、日本の梨よりも果肉が詰まった感じで、とても美味しかったです。

こんな若い女性が熱心にお参りする姿は、日本ではあまり見かけません。どうしてあんなに熱心なのですかと、いささか失礼な質問をすると、「わたしは仏教徒ですから、自分がしたくてしていることです」と、すがすがしい顔で返されました。何でも、ここに何日か滞在し、日々お参りをして過ごされているのだそうです。

わたしは自分を恥じました。わたしはお寺と仏教文化が好きで、あちこちのお寺を巡っています。どんなふうに仏教が伝播したかを知りたくて、韓国まで来ました。だけどそれは、単なる興味本位の物見遊山。彼女のような信仰心の厚い方から見たら、とんでもない闖入者なんです。それにもかかわらず、このように親切にしてくださる。その心のきれいさに、わたしは感動しました。

わたしが思う、日本の寺と韓国の寺の一番大きな違いは、自分が仏教徒であるという意識でお参りをする人がいるかいないか、です。同じ世界遺産でも、法隆寺に、「お参りをしよう」という目的で来る人はあまりいないはず。いやもちろん、われわれ日本人の心の中には、宗教という意識を越えた、「仏像には手を合わせる」という感覚が備わっていますし、個人的に、心の中でお参りする方は多いでしょう。わたしもそうです。しかし、それは、仏教徒としてのお参りではありません。一方、韓国には、この美しい人のように、生活の中に仏教が溶け込んでいる人が多いようです。

オンドルの実力

海印寺に行った日は、たいへんな悪天候だった。日が暮れると、9月でもかなり寒い
この旅は、9月の上旬に行われたものです。だから、韓国が日本よりは少し涼しいとは言っても、まだ、寒いというほどではないはずでした。しかし、海印寺は山の上だし、雨も降っていて、夜になると、かなり冷え込みました。おまけにわたしは、冷え性なので、こんな床の上に敷いた薄いの布団で寝られるの? と思いました。ちなみに、オンドルとは、韓国の伝統的な床暖房で、一般家庭にも広く普及している設備です。

●オンドルの特徴や構造についてもっと知りたい方は、こちらをごらんください。 

しかし、結果は爆睡でした。オンドルの上に寝ていると、体全体がほかほかしてきて、とても気持ちがいいのです。敷き布団はぺっちゃんこですが、それは、日本の敷布団のように厚いものだと、せっかくのオンドルのあたたかさが遮断されてしまうから。韓国は、日本よりも寒いので、どうしたら快適に過ごせるかを考えた生活の知恵です。

話は違うが、境内で面白いオブジェも発見。狛犬に似ているが、想像上の生き物の「ヘテ」というもの
韓国と日本はよく似ているようでいて、家の構造も布団の厚さもぜんぜん違うのです。お寺のあり方が違うのも、もちろん人の暮らし方や考え方が違うから。日本の宿坊も、かつては信徒さんが泊まるところで、韓国の宿坊と同じように、お参りが目的の人が多かったのですが、今は、観光客も気軽に泊まれるようにと、比較的設備が整ったところが多くなりました。なので、それと、韓国の宿坊を単純に比較するのは間違いです。

しかし、わたしのような興味本位の日本人が、真剣にお参りする人が多い韓国の宿坊に泊まるのはやめたほうがいい、とは思いません。この国の人には、そういう者も、快く受け入れてくださる度量の深さがありますし、人生は長いようで短く、自分が生きてきた世界とは違う場所に身をおいてみるチャンスは、そうたくさんはないです。また、単なる観光旅行に行っても、その国の人の生き方に触れる会話などできません。そういう意味で、今回の海印寺滞在は、わたしにとってはきわめて有意義なものとなりました。

次のページは海印寺の精進料理とお勤めの様子です。これもまた、日本の宿坊で経験したものとはかなり違いました。
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