世界遺産の宿坊は
意外に質素だった

海印寺は、カラフルで派手な寺だが、テンプルスティの施設は思いのほか質素だった
海印寺は、さすが世界遺産だけあって、お寺自体の建物は、たいへん派手で立派です。しかし、われわれが泊めていただく建物は、あまり目立たないところにあり、思いのほか質素なものでした。

オンドルのある大きな部屋に通され、正直言って驚きました。日本の宿坊も、たまに多人数でひとつの部屋に寝るケースがありますが、それと比べても、かなり人口密度が高いです。たくさんの女性がいて、それぞれに、布団一枚分のスペースを確保している感じ。わたしたちは遅く入ったので、もう寝るスペースすらないのではと思えました。

オンドルも、見慣れてくれば、これが韓国の普通の部屋だとわかるのですが、何せ、畳の国から来た者ですから、えっ、畳のない床の上に直接布団を敷くの? と、感覚がなかなかついて来ないのです。先に部屋に入っていた人々も、「この人たち、今ごろ来て何なの?」と、あまり快く思っていない雰囲気があり、たった一夜とは言え、大丈夫なのだろうかと不安が募りました。

何とか布団を見つけて荷物を置き、一人分のスペースを確保。一緒に来てくれたガイドの金さんは、韓国語で、まわりの人たちと何やら話していらっしゃいます。ときおり「イルボン(日本)」という言葉が聞こえてきます。ご存知のように、韓国と日本には不幸な歴史があり、日本人をよく思わない人も多いと聞いているので、話の内容がわからないと、何だか不安になります。「ここはわたしたちにとって神聖な場所なのに、日本人が、なぜ来るの?」と言われている気がするのです。

しかし、それは単なる疑心暗鬼で、本当はとても優しい人たちだったのだ。

韓国のおばさんは優しい

一人でお経を詠んでいたおばさん。しかし、この後、意外と気さくな人だと判明
食事と夜のお勤め(お経など、お寺の行事に参加すること)を済ませ、部屋に戻りました。お風呂はなく、外にあるシャワー室でざっと体を洗ってから、金さんと日本語で世間話をしていました。女性同士ですから、少し大きな声になっていたかも知れません。すると、隣にいた年配の女性が、突然、金さんに話しかけました。

その女性は、先ほどから、お経の本を見て、小さな声で唱えていらっしゃいました。ああ、わたしたちが、大声で、しかも日本語でおしゃべりしていたのが気に障ったんだなと思い、びびりました。その人の口調が、とても厳しいものに感じられたからです。ねえ、なんとおっしゃっているの、と、金さんに尋ねると、「この方はね、わたしのお経が、あなた方のお話の邪魔になっていませんかと聞いてくださったのよ」とのこと。びっくり! 何と、わたしの想像とは、正反対だったのです。

「ご親戚の方が日本にいるんですって。どうして、あなたが、わざわざ日本からお寺に泊まりに来たか、興味があるみたい」

わたしは、韓国のお寺に興味があって、いろいろ知りたくて、ここまで来たんですというと、女性はにっこり笑い、「どうですか? 韓国の寺が好きですか?」と。「もちろん大好きです。日本の寺とは少し違いますが、それがとても面白いです」

次のページはここで出会った、姿も心も美しい若い女性のお話、そして、オンドルがどれほど優秀なものであるかについてです。