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お葬式にまつわる迷信あれこれ

お葬式には、「友引」の日に葬儀をしてはいけない、死者の着物は左前に着せるなどといったたくさんの迷信や言い伝えがあります。これらの慣習は、災いを少しでも避けたいという願いを込めて、また公衆衛生や環境の視点などからが生まれました。

吉川 美津子

執筆者:吉川 美津子

葬儀・葬式・お墓ガイド

お葬式には、さまざまな迷信・俗信や言い伝えがあります。昔は病気やケガで簡単に命を落としてしまう時代でしたから、災いを少しでも避けたいという願いを込めて、縁起を担いだり、日常とは違う行動をするなどの慣習が生まれたのです。

科学の発達した現代では、迷信・俗信を気にしないという人も多くなりましたが、それでも良くないことが起こったときには、「ああ、やっぱり……」と思ってしまうのが人の心。古くからの言い伝えには、どんな根拠があるのでしょうか。
   

友引に葬儀をしてはいけない?

友引にお葬式をしてはいけないという迷信

現在、官公庁をはじめとする公共機関が作成するカレンダーには「六曜」が入っていません。無用な混乱を避けるためだそう。

普段の生活ではあまり意識することのない暦「六曜(ろくよう)」ですが、冠婚葬祭になると、なんとなく気になってしまうという人も多いでしょう。「六曜」は「六耀」「六輝」(ろっき)などとも言われ、もともとは中国の三国時代の軍師として有名な諸葛孔明が発案(真偽は不明)したものといわれています。

六耀は1カ月を5等分して6つに分けられていますが、中国から伝わった鎌倉時代からは呼び名も意味も変わり、現代では「先勝」「友引」「先負」「仏滅」「大安」「赤口」の6つの名称があります。

「仏滅」「友引」と聞くと、いかにも仏教と関係がありそうな言葉のように感じますが、明治初期までは「物滅(物を失わないように気をつける日)」「共引(引き分けの日)」の字が使われていたとか。

このように六曜は、仏教はもちろん、死とも全く関係ありませんので、友引に葬儀を行うと「死者がさみしがって友を連れていってしまう」という言い伝えはあくまで迷信にすぎません。

現実には運営上の関係で友引を休みとする火葬場も多く、葬儀を行うところは少ないようです。その場合、友引の日に通夜は行われますが、「友前(ともまえ)」「引前(びきまえ)」といわれる友引前日の通夜は行われません。

「ゲン担ぎ」として、今でも六曜は冠婚葬祭で用いられていることも事実。「お祝い事は良い日を選びたい」という気持ちも大事にしたいですね。
 

火葬場から帰るときは違うルートを通る?

火葬場から帰るときは、行きと違うルートを通るほうがいいという言い伝えがあります。また、葬儀式場から出棺する際に棺をぐるぐる回すという地域もあるよう。いずれも死者の方向感覚をなくして戻ってこないようにするためという迷信です。

出棺のときに「死者の茶碗を割る」という習慣は、「ご飯を食べに戻ってこないように」、棺に釘を打つのは「こちらへ戻ることなく、三途の川を無事に渡りきれるように」という言い伝えから。

「死者が戻ってきたらどうしよう」という不安、そして「死者が迷わずあの世へ行けるように」という意味を含んだ迷信は、この他にも多数あります。
 

妊婦が葬儀に参列すると子どもに災いがおこる?

妊婦が葬儀に参列すると、故人が赤ちゃんを連れていってしまうとか、子どもに災難がふりかかるなどの言い伝えがありますが、これは妊婦に対する配慮からきたと考えられます。

昔の葬儀といえば、女性は裏方として炊事などをこなさなければならず、大変な苦労があったことでしょう。妊婦だと当然母体に負担がかかりますので、周りの人の気遣いからこのような迷信が伝えられたのかもしれません。しかし、現代の葬儀では、葬儀社がほとんど手配してくれるため、女性の負担は随分と軽くなってきています。冷暖房完備、椅子席もあるホールが多いですから、昔と違って負担を強いられることはありません(妊娠初期でつわりがひどいとき、自宅での安静が必要と診断されている場合などは、参列を控えます)。

地域によっては「妊婦はお腹に鏡を入れておくべき」という言い伝えもあります。良くないこと、悪い霊を跳ね返すという意味があるそうです。
 

死者の着物は左前に合わせるのが基本

着物を左前に合わせて着せるのは縁起が悪い、といわれています。それは、死者に着せる着物は左側の襟から衽(おくみ)部分を肌に密着させ、右側を上に重ねて着用するからです。

紐の結び方は、ラインに対して垂直になる「縦結び」という結び方になります。強度が低く、ほどけやすいのが特徴です。
 
ところが生前に愛用していた着物を着る場合、左前にすると柄が合わなくなってしまうことがあります。その場合、柄を優先するか慣習を優先するか悩むところ。遺族がどのように送ってあげたいかという視点で考えてみてはいかがでしょうか。
 

箸の作法

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「三途の川への橋渡しをする」という意味で、二人一組となって骨を拾う習慣があることから、箸から箸へ食べ物を渡すことは死を連想させる行為として避けられています。

 
箸は神仏へのお供え物を運ぶものとされ、また日本では各々で「マイ箸」を持つなどの習慣があるために、特別なものであると考えられています。

箸の先をかむ「かみ箸」、いったん取りかけてから他の料理に箸をつける「移り箸」など、箸の使い方に決まりごとが多いのは、箸に特別な意味を持たせているからでしょう。

弔事を連想させる箸の使い方として、故人のために準備する一膳飯に箸をまっすぐに立てる「立て箸」、火葬後の収骨の際に2人同時にひとつの遺骨を箸でつまんで骨壺に納める「ハシワタシ(箸渡し)」といった慣習も広く知られています。  
 

夜に爪を切ると親の死に目に会えない

「夜爪(よづめ)」は、「世詰め(よづめ)」と語呂が同じで短命をイメージするので避けるべきという説があります。月あかりや星あかりを頼りに爪を切ることで事故につながり、感染症のリスクが高まったことから夜に爪を切るべきではないともいわれたようです。

地域によっては、その土地ならではの迷信・俗信、言い伝えがあるでしょう。過度に恐れる必要はありませんが、先人が残したメッセージの意味を理解すると、弔いに対する心構えが少し変わってくるかもしれません。

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