20世紀建築の種類
ルイス・ドメネク・イ・モンタネル設計のサン・パウ病院。世界遺産ながら現在も病院としても機能している珍しい物件。 |
まずは有名アーティストによる美的建築で、言わずと知れたスペインの「アントニオ・ガウディの作品群」、ガウディと並び評されるルイス・ドメネク・イ・モンタネルの「バルセロナのカタルーニャ音楽堂とサン・パウ病院」、近代建築の四大巨匠ヴァルター・グロピウスが初代校長を務めたバウハウスで知られるドイツの「ワイマールとデッサウのバウハウスとその関連遺産群」、同じく四大巨匠のひとりミース・ファン・デル・ローエの「ブルノのトゥーゲントハート邸」などがあげられる。四大巨匠でいえば2009年に日本の国立西洋美術館本館を含めた6か国22作品をまとめた「ル・コルビュジエの建築と都市計画」が世界遺産登録を審議されるほか、フランク・ロイド・ライトの建築群もアメリカの暫定リストに記載されている。
多いのは産業遺産で、1920年代に大西洋横断無線通信に使われたスウェーデンの「ヴァールベリ・ラジオ放送局」、蒸気式の排水施設であるオランダの「IR.D.F.ヴァウダヘマール(D.F.ヴァウダ蒸気水揚げポンプ場)」、イタリアとスイスをむすぶ山岳鉄道「レーティシュ鉄道アルブラ線・ベルニナ線と周辺の景観」などがある。
また、大学や都市といった空間建築も登録されており、建築家ルシオ・コスタの設計により建設されたブラジルの近未来的計画都市「ブラジリア」や、バウハウス様式で統一されたイスラエルの美しい計画都市「テルアビブのホワイト・シティ-近代化運動」、ベネズエラ中央大学を軸に広がる学園都市「カラカスの大学都市」などがそれにあたる。
特徴的なのは負の遺産だろう。日本の「原爆ドーム」とドイツの「アウシュヴィッツ-ビルケナウ、ナチスドイツの強制絶滅収容所 [1940-1945]」がそれだ。
20世紀という時代
近代建築の五原則をすべて備え、最高の住宅のひとつと言われるル・コルビュジエ設計のサヴォア邸。暫定遺産「ル・コルビュジエの建築と都市計画」登録作品のひとつ。 |
20世紀といえば科学の世紀。たとえば鉄筋コンクリートが建築を変えたように、様々な科学技術が人々の生活や仕事をまったく一新してしまった。計画都市や産業遺産はこれらをわかりやすく表現している。
現代芸術や現代哲学は人々の感性や価値観まで変えていき、それがガウディなどのアーティストを生み出していった。
同時にまた20世紀は二度の世界大戦を経験し、戦争でもっとも多くの人が死んだ世紀となった。「戦争の世紀」といったらこの20世紀をおいて他にはないだろう。
科学技術が進歩しても、芸術が発展しても、環境は悪化し地球にかかる負担は増えるばかりだったし、戦争だってなくすどころか減らすことさえできなかった。仮に人類が今後1,000年存続するとして、もしかしたら20世紀はよくも悪くも革命的な100年だったのかもしれないという気さえする。
20世紀建築を保存し、どのような価値を与え、21世紀につなぐのか。思いのほか重大なテーマが、ここに込められているのかもしれない。
代表的な20世紀建築リストは次ページへ。