文化的景観ってなんだ?
文化的景観、産業遺産両面の価値が認められた「石見銀山遺跡とその文化的景観」登録の城上神社。 |
世界遺産に文化的景観の概念を持ち込むことになった「世界遺産条約履行のための作業指針」では、文化的景観をどうとらえているのだろうか? その抜粋と、1994年の「グローバル・ストラテジー」に示された文化的景観の3つの種別を掲載しよう。
■文化的景観は、文化的資産であって、条約第1条のいう「自然と人間との共同作品(combined works of nature and of man)」に相当するものである。人間社会又は人間の居住地が、自然環境による物理的制約のなかで、社会的、経済的、文化的な内外の力に継続的に影響されながら、どのような進化をたどってきたのかを例証するものである
(条約第1条の該当部分は下記。「人間の作品、自然と人間との共同作品及び考古学的遺跡を含む区域であって、歴史上、芸術上、民族学上又は人類学上顕著な普遍的価値を有するもの」)
・意匠された景観:人間にデザインされた自然の景観。庭園や公園など。
・有機的に発展する景観:人間の社会・経済・宗教等の活動が自然環境に影響を与えている景観。遺跡のように過去の建造物が自然景観に溶け込んだ遺存景観と、棚田のように現在も使用されていて今後も自然に影響を与える継続景観がある。
・関連する文化的景観:人間の宗教的・美的・文化的活動に影響を与える自然の景観。
ポイントは「自然と人間の共同作品」! 人間がその文化遺産を作るにあたって周囲の環境が必要で、やがて自然環境と一体化した特異な景観=文化的景観を生み出した。ついでに、日本国内の改正文化財保護法の第2条第1項第5号も紹介しておこう。その下の8つの景観地についてのテキストは「重要文化的景観選定基準」の抜粋だ。
■地域における人々の生活又は生業及び当該地域の風土により形成された景観地で我が国民の生活又は生業の理解のため欠くことのできないもの
1.水田・畑地などの農耕に関する景観地
2.茅野・牧野などの採草・放牧に関する景観地
3.用材林・防災林などの森林の利用に関する景観地
4.養殖いかだ・海苔ひびなどの漁ろうに関する景観地
5.ため池・水路・港などの水の利用に関する景観地
6.鉱山・採石場・工場群などの採掘・製造に関する景観地
7.道・広場などの流通・往来に関する景観地
8.垣根・屋敷林などの居住に関する景観地
なお、複合遺産との違いだが、複合遺産は文化・自然両面において普遍的価値を持つものであるのに対し、文化的景観の場合は自然遺産の普遍的価値(桁外れの自然景観や特殊な生態系など)を持つ必要はない。
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