2008年9月26日、文化庁はこれらに加えて新たに5件を暫定リストに加えることを発表した。今回はこの新しい世界遺産候補と、見送られた候補地を紹介しよう。
※同年12月、文化庁は「金と銀の島、佐渡」については石見銀座遺跡との統合協議が進んでおらず、「百舌鳥・古市古墳群」は宮内庁との調整が進展していないことから、両者の暫定リスト記載を遅らせることを決定した。2009年には2件を除いた3件がリスト入りする予定。
竪穴式住居、高床式倉庫、環状配石(ストーン・サークル)などが多数見られる青森市の三内丸山遺跡。 |
世界遺産暫定リストに新たに5件記載へ!
文化庁は世界遺産暫定リストに新たに5件を掲載する方針を発表した(※世界遺産になるためには、ユネスコに推薦される前に必ず国内の暫定リストに記載されなければならない→いまさら聞けない世界遺産の基礎知識参照)。2006年から世界文化遺産候補地を自治体から募集していたが、2006年は24件が立候補して4件が暫定リストに記載(「飛鳥・藤原 -古代日本の宮都と遺跡群-」「富岡製糸場と絹産業遺産群 -日本産業革命の原点-」「長崎の教会群とキリスト教関連遺産」「富士山」)、さらに2007年は13件が立候補しており、2006年の残りの物件と合わせて32件(統合した物件があったため1件減った)が審議されていた。
この32件から選ばれた5件が以下だ。
■北海道・北東北の縄文遺跡群(北海道、青森県、岩手県、秋田県)
狩猟・漁労・採集を中心とする縄文文化は約1万年も続いてきた。貝塚、環状列石、住居跡をはじめ、この長きにわたる完成された文化の遺産を4道県にまたがって登録しようという物件。東日本各地の遺跡を入れることを今回条件づけられた。登録を目指す遺跡は、北海道の北黄金貝塚、入江・高砂貝塚、大船遺跡、青森県の三内丸山遺跡、長七谷地貝塚、亀ヶ岡石器時代遺跡、岩手県の御所野遺跡、秋田県の大湯環状列石、伊勢堂岱遺跡など。
■金と銀の島、佐渡(新潟県)
2007年に世界遺産に登録された「石見銀山遺跡とその文化的景観」の石見銀山の影響を受け、その技術を応用することで近代化した最先端の金銀生産システムを構築した。この産業遺産の数々と、それをベースにした文化的景観を登録しようというもの。ただしこの遺産については、「石見銀山遺跡とその文化的景観」を拡大して統合したうえで登録する必要性が指摘された。
■百舌鳥・古市古墳群(大阪府)
ピラミッド、秦始皇陵というふたつの世界遺産と並び世界三大墳墓として世界的に知られる仁徳陵。この仁徳陵や応神陵を中心に4~6世紀にかけて造られた陵墓をまとめた物件。ただし、天皇陵は宮内庁が管理していて文化財指定されていないため、この物件のみ、この確認作業を進めてからの暫定リスト入りとなる。百舌鳥古墳群から仁徳陵古墳、履中陵古墳、ニサンザイ古墳、七観音古墳など、古市古墳群からは応神陵古墳、仲姫陵古墳、仲哀陵古墳、野中古墳、墓山古墳などが登録を予定されている。
■宗像・沖ノ島と関連遺産群(福岡県)
沖ノ島は「海の正倉院」と呼ばれる周囲約4kmの島。大和朝廷が朝鮮半島や中国との交流の安全と成功を祈願して祭祀を行った場所で、多くの国宝が出土しており、いまなお「神宿りの島」として尊ばれている。この沖ノ島を統括していたのが胸形氏で、関係するのが津屋崎古墳群や宗像神社だ。朝廷や中国といった国内外事情や古代神道、その文化史を知る遺産ということで、今回の推薦となった。沖ノ島、津屋崎古墳群、宗像神社のほかに、桜京古墳、東郷高塚古墳も登録を予定されている。
三井三池炭鉱跡に含まれる万田坑跡。 |
欧米以外ではじめて近代化を成功させた日本。西洋技術を導入することで、日本は世界に例を見ないスピードで発展し、近代史の中でこれを「奇跡」と表現する学者もいる。製鉄・造船・石炭・紡績といった産業でこれを主導したのが九州・山口の産業遺産群だ。山口県の荻反射炉、福岡県の東田第一高炉跡、佐賀県の旧高取家住宅、長崎県の旧グラバー住宅、端島炭鉱、福岡県・熊本県の三井石炭鉱業の三池炭鉱諸施設、鹿児島県の旧集成館などが含まれている。
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