海と大地と大気と森が創り出した黄龍の石灰棚
展望台から見た春の五彩池と、奥には黄龍後寺。曇りの日の池の色は晴れの日の色とまたまったく違う
九寨溝からひと山を隔てた黄龍の地も、やはり3~4億年前は海底にあった。海中のサンゴが堆積した石灰岩はカルストの台地を作り出し、やがてこの土地が隆起した。
石灰岩は水に溶けやすいので、雨水を受けて浸食され、地下水をろ過すると同時に水中に多量の炭酸カルシウムを溶かし込む。炭酸カルシウムは水中のチリやホコリと結びついて沈殿し、さらに別のチリやホコリと結びついて「石灰華」と呼ばれる樹氷のような層を作り出す。
これが集まって木々や葉を取り込んで壁になり、壁ができると今度は小石がそこにひっかり、コロコロ転がって壁の下に穴を掘る。この穴が大きくなってプールを造り、石灰棚へと成長する。
棚から溢れた水は少しずつ垂れることでツララのような鍾乳石を生み出し、一方水滴が落ちた場所にも石灰華がたまって盛り上がって石筍(せきじゅん)となり、これらがくっつくと石柱となる。
このように、黄龍の景観は海と大地と大気と森が億の年月をかけて造り上げた大自然の造形なのだ。
神の色彩 彩池
晴れの五彩池と、背後には万年雪を抱いた玉翡峰。あまりに美しい景色
池の外側、棚の壁は黄金色の石灰が龍の鱗のように重なって全体を彩る。でも湖の底は、あまりに透明度が高い水のおかげか、底の底までハッキリ見える。見えるのだが、その色はまちまちで、表現しがたいほどまっ青だったり、エメラルドグリーンだったり。
これが太陽が角度を変えるとさらに色を変える。朝は透明さが際立ち、昼は青を強め、夕は空の赤や黄を映し、夜は黒へと戻る。
1年を通しても同じこと。冬は雪の白を混ぜて色彩はさらにピュアに洗練され、春は新緑と花々の軽くほがらかな色で魅せ、夏は太陽がもっとも高く昇って色彩はもっとも濃く、秋は紅葉の黄と赤を含んで色の種類はもっとも多様化する。