大自然への畏敬と黄龍

飛瀑流輝

多数存在する滝のひとつ、飛瀑流輝。水量が豊富な夏は滝が連なり、水量が少ない季節は黄の石灰岩がむき出しになる

奇跡的な景観を見たとき、人が感じることは古今東西変わらない。人々はその美しさや大きさに神を見て、祈り、祀る。

こうして人類は自然に祈り続けてきた。イグアスの滝に、エアーズ・ロックに、カッパドキアに、エベレストに、メテオラに……

黄龍は「人間瑤池」、つまりこの世に降り立った仙境と崇められ、この地を知るチベットの人々はいつの時代も黄龍を敬い、祀ってきた。

彼らはこの神々に自分が生かされていると感じ、自然が流れつつもいつも同じ姿をしている不思議を知り、この永遠普遍の謎を畏敬しつつも、人知が及ばぬことを詮索せず、ただ信じて生きてきた。

世界遺産 黄龍風景区の全体像

黄龍の石灰棚

複雑な色彩が絡み合う石灰棚の景色。陽光の入射角や映り込む木々、花、空の色でその姿を毎秒変える

黄龍は雪宝山の深い渓谷に広がっており、標高3,000mを超えるこの地を美しい川がおよそ10の連続する湖を貫いて流れている。

この川が、およそ3,400もあるといわれる彩池と呼ばれる、万華鏡のように色彩を変える湖沼群や、パンダなど多数の野生動物が暮らす深い森を育んでいる。

ハイライトはなんといっても黄金色の石灰棚だろう。プールのような石灰棚が傾斜に沿って無数に広がる様はあまりに不自然。太古の人々はここに神を見たが、たまたま側にいた日本人は「中国人ってこんなものまで造っちゃうんだ」と、自然の手によるものだとは到底信じられない様子だった。

川と10の湖を中心に展開するこの風景区には、上りと下り、2本の遊歩道が通っており、観光客はこの道を歩いて眺めることになる。道の外に出るのはもちろん禁止。

スタート地点は標高3,100mで、最高点の展望台が3,650m。上りが約2~2.5時間、下りは1.5時間ほどの旅となる。つねに雪をまとって輝く標高6,000m近い岷山山脈を眺め、大地と森たちに濾過された美しい水と空気に癒されながら、山道を歩く。