2007年4月、ユネスコは『気候変動と世界遺産のケース・スタディ』を示し、その脅威が確認された26件の世界遺産のリストを発表した。今回は前・後編に分けてこの26件の世界遺産とケース・スタディの概要を紹介しよう。
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※なお、後編では、温暖化の被害を受ける考古学遺跡の世界遺産4件&歴史都市・集落の世界遺産8件、総まとめを公開する。リンクは最終ページへ。
世界規模で広がる新たなる危機
ヴェネツィアのサン・ジョルジョ・マッジョーレ教会。地盤沈下と海水面上昇によって、ヴェネツィアは街全体が水没の危機にある。 |
ところが21世紀、世界遺産にとって、世界同時進行で訪れる「新しい種類の脅威:"new" kinds of threats」 がより大きな問題であることが明らかになりつつある。地球温暖化による気候変動である。ユネスコは2007年4月、『気候変動と世界遺産のケース・スタディ(Case Studies on Climate Change and World Heritage)』を発表し、気候変動が脅かす26の世界遺産リストを公表した。
地球環境はこれだけ変わりつつある――IPCC報告書より
2002年8月に大洪水の被害を受けたチェスキー・クルムロフ。翌2003年は干ばつに苦しんだが、異常気象の原因は気候変動だと考えられている。 |
もっとも驚くべき数字は大気中の二酸化炭素濃度だろう。18世紀の産業革命以前、数千年にわたって二酸化炭素濃度は280ppm前後で安定していた。ところがその後の急上昇で現在の濃度は360ppm以上。これはここ42万年でもっとも高い数値だという。
温室効果ガスのために1990年から2100年までに予想される地球の平均気温の伸びは1.4~5.8度(第四次報告書では1.8~4.0度)で、これにより9~88cmの海水面の上昇が予想されている。そして、2007年の第四次報告書では、その急上昇の原因が人類の活動にある確率は90%以上。もし4度以上の気温上昇があった場合、生物種の40%が絶滅する可能性があるとしている。
この100年で地球の平均気温は0.74度高くなったという。その結果いったい地球に何が起こりつつあるのか? ユネスコが発表した5分野26件の世界遺産の例を見ながら学んでいこう。
温暖化の被害を受ける氷河の世界遺産は次のページへ。