世界遺産/世界遺産とは

世界遺産の基礎知識

ユネスコが主導する「世界遺産」とはどんな活動なんだろう? 世界遺産条約の生い立ちからその理念、登録のプロセスまで、世界遺産の基礎知識を解説する。文化遺産、自然遺産、複合遺産、危険遺産、負の遺産、無形文化遺産などの違いも明らかに!

長谷川 大

執筆者:長谷川 大

世界遺産ガイド

知っておきたい世界遺産の基礎知識

ギリシアの世界遺産「アテネのアクロポリス」のパルテノン神殿

ユネスコのシンボルマークになっているギリシアの世界遺産「アテネのアクロポリス」のパルテノン神殿

193か国が締約し、「世界でもっとも成功した条約のひとつ」と評価されている世界遺産条約。この条約に基づいて毎年「世界遺産」が認定されているわけだが、実際のところ世界遺産っていったいなんなのだろう? 本記事では世界遺産の基礎的な知識をわかりやすく解説していく。
 

日本の世界遺産

日本の世界遺産「厳島神社」

自然と調和した美しい景観で知られる日本の世界遺産「厳島神社」。背景の弥山をご神体、前景の海を庭園と見立てている

まずは日本の世界遺産23件を紹介しよう。
  • 法隆寺地域の仏教建造物(1993、文化遺産)
  • 姫路城(1993年、文化遺産)
  • 白神山地(1993年、自然遺産)
  • 屋久島(1993年、自然遺産)
  • 古都京都の文化財(京都市、宇治市、大津市)(1994年、文化遺産)
  • 白川郷・五箇山の合掌造り集落(1995年、文化遺産)
  • 原爆ドーム(1996年、文化遺産)
  • 厳島神社(1996年、文化遺産)
  • 古都奈良の文化財(1998年、文化遺産)
  • 日光の社寺(1999年、文化遺産)
  • 琉球王国のグスク及び関連遺産群(2000年、文化遺産)
  • 紀伊山地の霊場と参詣道(2004年、文化遺産)
  • 知床(2005年、自然遺産)
  • 石見銀山遺跡とその文化的景観(2007年、文化遺産)
  • 小笠原諸島(2011年、自然遺産)
  • 平泉‐仏国土(浄土)を表す建築・庭園及び考古学的遺跡群(2011年、文化遺産)
  • 富士山-信仰の対象と芸術の源泉(2013年、文化遺産)
  • 富岡製糸場と絹産業遺産群(2014年、文化遺産)
  • 明治日本の産業革命遺産 製鉄・鉄鋼、造船、石炭産業(2015年、文化遺産)
  • ル・コルビュジエの建築作品 - 近代建築運動への顕著な貢献(国立西洋美術館本館が7か国17件の構成資産のひとつとして登録。2016年、文化遺産)
  • 「神宿る島」宗像・沖ノ島と関連遺産群(2017年、文化遺産)
  • 長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産(2018年、文化遺産)
  • 百舌鳥・古市古墳群(2019年、文化遺産)

そして今後5~10年以内の登録を目指して7件の世界遺産候補地が日本の世界遺産暫定リスト(後述)に記載されている。なお、2020年には「奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島」が世界遺産登録に挑戦する予定だ。
  • 武家の古都・鎌倉(文化遺産)
  • 彦根城(文化遺産)
  • 飛鳥・藤原 - 古代日本の宮都と遺跡群(文化遺産)
  • 北海道・北東北の縄文遺跡群(文化遺産)
  • 金を中心とする佐渡鉱山の遺産群(文化遺産)
  • 平泉‐仏国土(浄土)を表す建築・庭園及び考古学的遺跡群(文化遺産。範囲拡大)
  • 奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島(自然遺産)
 

世界遺産条約の夜明け

世界遺産「アブシンベルからフィラエまでのヌビア遺跡群」構成資産、アブシンベル大神殿

アブシンベル大神殿。移転のため一度切り刻まれており、背後の山はドームで支えられている。世界遺産「アブシンベルからフィラエまでのヌビア遺跡群」構成資産

世界遺産条約のきっかけとなったヌビア遺跡群の物語を紹介しよう。

1950年代前半、エジプト大統領ナセルは、ナイル川の氾濫防止と灌漑・生活用水の確保、発電を目的に、アスワンハイダムの建設計画を発表した。ダム完成後にできる人口湖は全長500キロメートル以上に及び、数多くのヌビア遺跡群が水没することを意味した。

ユネスコ(UNESCO:国際連合教育科学文化機関)はエジプトがダムの建設を開始する1960年に水没遺跡救済アピールを展開。これに世界50か国以上が援助を表明し、アブシンベルを周囲の岩窟ごと移動するという人類史上かつてない救済プロジェクトが始動した。

1964年、アブシンベルの岩窟全体を20~30tのブロック1000個以上に切り分けて解体し、5年をかけて約110メートル西、60メートル上方に移転した。その後、ヌビア遺跡群のカブラシャ神殿やフィラエ神殿なども移されたが、すでに水没あるいは半水没しており、水中からの救出となった。

このキャンペーンを機に、価値ある遺産を守ろうという機運が高まり、1972年の第17回ユネスコ総会においてひとつの条約が採択された。これが「世界の文化遺産および自然遺産の保護に関する条約」、すなわち世界遺産条約だ。

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世界遺産条約の目的と世界遺産リスト

ペルーの世界遺産「マチュピチュの歴史保護区」

ペルーの世界遺産「マチュピチュの歴史保護区」の絶景。観光によるオーバーユースの懸念から、ペルー政府は2011年より入場者制限を採り入れている

世界遺産条約の目的をその前文に見てみよう。

■世界遺産条約前文より抜粋
  • 文化遺産及び自然遺産の中には、特別の重要性を有しており、したがって、人類全体のための世界の遺産の一部として保存する必要があるものがあることを考慮し…(中略)…、顕著な普遍的価値を有する文化遺産及び自然遺産の保護に参加することが、国際社会全体の任務であることを考慮し、このため、顕著な普遍的価値を有する文化遺産及び自然遺産を集団で保護するための効果的な体制であって、常設的に、かつ、現代の科学的方法により組織されたものを確立する新たな措置を、条約の形式で採択することが重要であることを考慮し、総会の第16回会期においてこの問題が国際条約の対象となるべきことを決定して、この条約を1972年11月16日に採択する。
大切なのが「顕著な普遍的価値(Outstanding Universal Value)」という概念だ。「普遍」であるから、時代や場所、国や人種、地域、文化を問わず人類にとって永遠に変わらぬ価値を持つ文化遺産と自然遺産を守ること。これが条約の目的なのだ。

そして該当する物件は「世界遺産リスト」に掲載され、公表されることが定められている。このリストは英語とフランス語で書かれており、これが世界遺産の正式名称となる。
 

世界遺産の種類

アメリカの世界遺産「イエローストーン国立公園」のグランド・プリズマティック・スプリング

アメリカの世界遺産「イエローストーン国立公園」のグランド・プリズマティック・スプリング。1872年に指定された世界初の国立公園であり、1978年に誕生した初の世界遺産のひとつでもある

世界遺産は以下の3つに分類される(詳細は記事「文化遺産とは」「自然遺産とは」「複合遺産とは」で解説)。
  • 文化遺産:建築物や遺跡など人類が造り出した文化的な物件
  • 自然遺産:大自然の景観や貴重な生態系など自然の物件
  • 複合遺産:文化遺産・自然遺産双方の価値を持つ物件
世界遺産に登録されるためには10ある「登録基準」の少なくとも1項目を満たしていなければならない。このうち、登録基準(i)~(vi)を満たす物件を文化遺産、(vii)~(x)を満たす物件を自然遺産、双方を1項目ずつ以上満たす物件を複合遺産という(登録基準は「文化遺産とは」「自然遺産とは」に記載)。

登録基準以外にも様々な規定がある。たとえば自然遺産は「完全性(Integrity)」を、文化遺産は「完全性」に加えて「真正性(Authenticity)」を満たさなければならない。

完全性とは、顕著な普遍的価値を構成する特徴のすべてを無傷で保有し、適切な法制度や大きさ等が確保されていて、その維持が可能であることをを示す。真正性とは、文化遺産を構成する意匠・素材・工法・用途・機能などが本物で、関連した伝統や技能・精神・感性等が正しく継承されていることを示す。

また、世界遺産は国内法によって保護されていなければならない。日本では文化遺産については文化財保護法、自然遺産については自然公園法が主にその役割を担っている。

さらに、世界遺産は有形の不動産のみを対象としており、絵画や彫刻などは対象としていない(動かしがたい巨大な壁画や岩絵などは対象となる)。
 

世界遺産登録までのプロセス

インドネシアの世界遺産「ボロブドゥール寺院遺跡群」、ボロブドゥールの円壇

インドネシアの世界遺産「ボロブドゥール寺院遺跡群」、ボロブドゥールの円壇。ジャングルの侵食を受けて崩壊寸前だったが、ユネスコの救済キャンペーンで修復された

世界遺産にはどうしたら登録されるのか、そのプロセスを紹介しよう。
 
  1. 国が世界遺産条約を締結する
  2. 県や市町村といった自治体が政府に世界遺産登録を希望・申請する。日本では文化遺産は文化庁、自然遺産は環境省と林野庁が主に担当している
  3. 今後5~10年で登録が可能な物件をユネスコ世界遺産センターに推薦し、各国の「暫定リスト」に登録する
  4. 暫定リスト記載の物件で準備が整ったものについて、「登録推薦書」をユネスコ世界遺産センターに提出する。ただし、世界遺産委員会に推薦できるのは1年1か国2件までで、2件の場合、1件は自然遺産か文化的景観でなくてはならない(多数の国にまたがるトランスパウンダリー・サイトの場合、主導する1か国の推薦枠を使用する)。2020年から1年1か国1件のみに削減される予定
  5. 文化遺産はイコモス(ICOMOS:国際記念物遺跡会議)、自然遺産はIUCN(国際自然保護連合)、複合遺産は両者が現地調査を含む専門調査を行って「評価報告書」を作成する。その際、登録・情報照会(3年以内の追加資料の提出で再審査が可能)・登録延期(登録プロセスを最初からやり直し)・不登録のいずれかの「勧告」を行う
  6. 評価報告書をもとに、毎年1度開催される世界遺産委員会で、登録・情報照会・登録延期・不登録のいずれかの決議を行う。不登録を受けた物件の再推薦は認められない
 

世界遺産の登録抹消

ドイツの元世界遺産「ドレスデン・エルベ渓谷」

ドイツの元世界遺産「ドレスデン・エルベ渓谷」の夜景。ドレスデン市は住民投票を行い、架橋の必要性を確認したのち抹消を覚悟のうえで工事を開始した

2007年にオマーンの「アラビアオリックスの保護区」、2009年にドイツの「ドレスデン・エルベ渓谷」が世界遺産リストへの登録を抹消され、「元」世界遺産となった。

前者はオマーン政府が資源開発の目的で保護区を90%も縮小してしまったこと、後者は世界遺産委員会の警告を無視して橋の建設を強行し、文化的景観としての顕著な普遍的価値が失われたことが抹消の理由となった。こうした抹消の基準は以下のように定められている。
  • 世界遺産一覧表への登録を決定づけた資産の特徴が失われるほど資産の状態が悪化していた場合
  • 世界遺産資産の本来の特質が、登録推薦の時点で既に人間の行為により脅かされており、かつ、その時点で締約国によりまとめられた必要な改善措置が、予定された期間内に実施されなかった場合
 

危機遺産と危機遺産リスト

ウズベキスタンの世界遺産「シャフリサブス歴史地区」にあるティムールの離宮、アク・サライ

ウズベキスタンの世界遺産「シャフリサブス歴史地区」にあるティムールの離宮、アク・サライ。過度の観光開発により2016年に危機遺産リスト入りしており、改善が見られないことから世界遺産リストからの抹消の危機を迎えている

世界遺産の中には自然災害や公害・戦争・内戦などの環境変化によって顕著な普遍的価値を失う危機にさらされているものがある。世界遺産条約は緊急に保護が必要なこれらの物件を「危険にさらされている世界遺産リスト(危機遺産リスト)」に登載して公表することを定めている。2019年7月現在、危機遺産リストには53件が登録されている(詳細は「危機遺産とは」参照)。

近年では世界同時進行で世界遺産が危機に瀕しつつあり、危機遺産リストによる管理では防ぎきれない地球規模の被害も確認されている。たとえば都市付近の世界遺産の多くに見られる酸性雨の問題や、途上国で見られる盗掘や密猟が一例だが、下記2件は特に問題視されている。

まずは観光問題で、たとえば年間50万人が訪れるマチュピチュでは観光客が歩くときの圧力や振動で石畳は崩れつつあり、いずれ地滑りを起こして谷底に崩落するという調査結果もある。このためペルー政府は2011年より1日の入場者数の上限を定めるなど対策を進めている。こうした入場規制を設ける世界遺産は増えており、「九寨溝の渓谷の景観と歴史地域」(中国)や「テ・ワヒポウナム - 南西ニュージーランド」(ニュージーランド)、「ココ島国立公園」(コスタリカ)、「ガラパゴス諸島」(エクアドル)などで採用されている。

もっと深刻なのが地球温暖化による気候変動の影響だ。ユネスコは2007年4月、『気候変動と世界遺産のケース・スタディ』を発表し、気候変動が脅かす26の世界遺産リストを公表、気候変動の危険性と予防を全人類に働きかけている(詳細は下記記事参照)。

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負の遺産、記憶の遺産

ポーランドの世界遺産「アウシュヴィッツ-ビルケナウ、ナチスドイツの強制絶滅収容所 [1940-1945]」

ポーランドの世界遺産「アウシュヴィッツ-ビルケナウ、ナチスドイツの強制絶滅収容所 [1940-1945]」、第一収容所アウシュヴィッツの鉄条網と収容棟。鉄条網には常時高圧電流が流されており、感電自殺する者も少なくなかったという

ユネスコはふたつの世界大戦の反省から1946年に創設された国連の専門機関だ。「国際連合教育科学文化機関」の名前の通り、教育・科学・文化を普及させて二度と戦争の悲劇を繰り返さないことを目的としている。世界遺産に「負の遺産」、あるいは「記憶の遺産」と呼ばれる物件があるのもその影響だろう。

負の遺産は世界遺産条約内で定義されているものではないので、厳密にどれがそれなのか決まっているわけではない。ただ、悲劇を刻み込まれたモニュメントであると見なされた世界遺産がこう呼ばれている。典型的な負の遺産といわれるのが下記3件だ。

■アウシュヴィッツ - ビルケナウ、ナチスドイツの強制絶滅収容所[1940 - 1945](ポーランド):1979年、 文化遺産(vi)
ユダヤ人迫害の拠点のひとつ。

■原爆ドーム(日本):1996年、文化遺産(vi)
世界で2例しかない核兵器実戦使用現場。

■ゴレ島(セネガル):1978年、文化遺産(vi)
奴隷貿易の中継点。

「アウシュヴィッツ - ビルケナウ」の登録理由には「人道に反して犯されたもっとも重要な罪を具体的に記録する例」とあり、この収容所の保持が「世界平和の維持に貢献する」とある。原爆ドームは「人類が刻んだ史上もっとも破壊的な力なシンボルであり、世界平和に対する望みと、核兵器の廃絶を願うモニュメント」、ゴレ島は「人類史の中でも最悪の悲劇のひとつである奴隷貿易を示す重要な証拠」であり「記憶すべき島」としている。

そして上記3件はいずれも「出来事」に関連した規定である文化遺産登録基準(vi)のみが適用されている。建物そのものに顕著な普遍的価値が認められるわけではないものの、「記憶」を認定理由として世界遺産リストに登録された。

負の遺産としてよく紹介される物件には以下の例がある。

■ヴォルタ州、グレーター・アクラ州、セントラル州、ウェスタン州の城塞群(ガーナ):1979年、文化遺産(vi)
ゴールド・コーストと呼ばれた西アフリカの金や奴隷の貿易拠点。

■ポトシ市街(ボリビア):1987年、文化遺産(ii)(iv)(vi)
住民を強制労働させることによって価格革命を起こすほどの銀を産出した。

■トリニダードとロス・インヘニオス渓谷(キューバ):1988年、文化遺産(iv)(v)
カリブ海におけるサトウキビ・プランテーションと奴隷貿易の拠点。

■ソロヴェツキー諸島の文化と歴史遺産群(ロシア):1992年、文化遺産(iv)
粛清の犠牲者は総計2000万人ともいうスターリンの強制収容所のさきがけ。

■ロベン島(南アフリカ):1999年、文化遺産(iii)(vi)
大航海時代以来、ネルソン・マンデラをはじめ多数の政治犯を収容した監獄の島。

■ザンジバルのストーン・タウン(タンザニア):2000年、文化遺産(ii)(iii)(vi)
東アフリカの奴隷貿易の拠点。数十万人がインドや中南米に送られた。

■バーミヤン渓谷の文化的景観と古代遺跡群(アフガニスタン):2003年、文化遺産(i)(ii)(iii)(iv)(vi)
タリバンによって破壊された仏像で有名な遺跡群。

■クンタ・キンテ島と関連遺跡群(ガンビア):2003年、文化遺産(iii)(vi)
ヨーロッパ、アメリカ大陸、アフリカを結ぶ三角貿易の拠点。多くの奴隷が運ばれた。

■海商都市リヴァプール(イギリス):2004年、文化遺産(ii)(iii)(iv)
リヴァプールは奴隷貿易を支えた港湾都市。産業革命期の経済の中心地として大英帝国の繁栄を支えた。

■モスタル旧市街の古橋地区(ボスニア・ヘルツェゴビナ):2005年、文化遺産(vi)
1992年からの内戦で破壊されたスタリ・モスト(古い橋)は、多文化の衝突の象徴であると同時に、国際協力の象徴でもある。

■アプラヴァシ・ガート(モーリシャス):2006年、文化遺産(vi)
契約を強制された50万近い「自由」労働者が奴隷の代わりに収容された。

■ル・モーンの文化的景観(モーリシャス):2008年、文化遺産(i)(vi)
18~19世紀、奴隷たちはル・モーンの山に逃げ込み、村を作って隠れ住んだ。

■オーストラリア囚人遺跡群(オーストラリア):2010年、文化遺産(iv)(vi)
アボリジニから奪った土地に受刑者を送り込み、植民地拡大を図ったその施設。

■ビキニ環礁(マーシャル諸島):2010年、 文化遺産(iv)(vi)
アメリカが1946~1958年の間に67回行った核実験場。

負の遺産の詳細は下記記事を参照のこと。

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新しい世界遺産「無形文化遺産」

世界遺産「マラケシュ旧市街」のジャマ・エル・フナ広場

世界遺産「マラケシュ旧市街」のジャマ・エル・フナ広場。この広場は世界遺産であると同時に、「ジャマ・エル・フナ広場の文化的空間」の名でユネスコの無形文化遺産にも登録されている。

実は世界遺産の多くが欧米先進国の文化遺産で、小国や途上国のものは少ない。途上国にとって遺産の保護・管理体制を整えることは政治的・経済的・技術的・人的理由から難しいうえに、石造建築のように形に残る巨大文明が少なかったことが主な原因だ。

一方で、世界の人々の生活は確実に西欧化しており、形を持たない数多くの文化が消滅の危機に瀕している。音楽や舞踊・劇・祭・芸能・工芸技術・料理術といった文化遺産は人づてに継承されるため、伝承者がいなくなると建物のように修復や再建ができず完全に消え失せてしまう。

こうした無形文化遺産に対応するため、1998年、ユネスコは「人類の口承および無形文化遺産の傑作の宣言」を採択し、2001年から隔年ですぐれた無形文化遺産を発表しており、2005年8月までに90件が登録された。

2003年には「無形文化遺産の保護に関する条約(無形文化遺産保護条約)」が採択され、2006年に発効。ユネスコは2009年9月の無形文化遺産委員会で、無形文化遺産の世界遺産リストである「人類の無形文化遺産の代表的な一覧表(代表リスト)」と、「緊急に保護する必要がある無形文化遺産の一覧表(緊急保護リスト)」を作成し、代表リストに166件、緊急保護リストに12件、計178件を掲載した。傑作宣言の90件はここに吸収されている。

以後リストは毎年更新されており、2019年7月時点で代表リストに429件(日本は21件)、緊急保護リストに59件、グッド・プラクティス(無形文化遺産保護条約に則った模範的な取り組み)として20件が登録されている。

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世界遺産に参加しよう

世界遺産条約の目的について、条約前文では「いずれの国のものであることを問わず、類を見ないかけがえのない遺産を保護することが、世界の全国民にとって重要である」とし、「顕著な普遍的価値を有する文化遺産及び自然遺産の保護に参加することが、国際社会全体の任務」であるとしている。簡単にいえば、かけがえのない遺産を人類全体で守り、後世に伝えていこう、ということだ。

世界遺産はただ登録されて終わりというものではない。登録された世界遺産は、その国の政府が永久に保護していかなければならない。世界遺産登録はスタート地点にすぎないのだ。

世界遺産登録によって遺跡の入場料が値上がったり、現地の人々の開発が制限されたり、いままで訪れることができた場所に立ち入れなくなったりすることも少なくない。でも、世界遺産を訪れてお金を払ったり、遺跡の偉大さを認めて世界中に伝えたり、開発を抑制したり、そうした世界中の人々の一致団結した行動によって世界遺産は保護される。

世界遺産の担い手は、全人類だ。世界中の人々がお互いの文化を認めて団結することにこそ意味がある。戦争を繰り返してきた人類が考え出したかつてないこのプロジェクトに、あなたも参加してみませんか?

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※海外を訪れる際には最新情報の入手に努め、「外務省 海外安全ホームページ」を確認するなど、安全確保に十分注意を払ってください。

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