フランス語には、英語と同じように名詞の単数形・複数形の区別があります。日本語と比べると、単数・複数という数の概念がややこしいと思われがちなフランス語。しかしこのめんどくさい単数・複数の区別は、実は、世界をいきいきと語るためにとっても便利な道具でもあります。今回は、フランス語名詞の複数形のつくり方をバッチリマスターしましょう。
正確な数の描写はみんなを幸せにする!
観る人みんなが幸せになる映画!?『アメリ』 |
その中でも人気の高いシーンの一つに、アメリが目の不自由なおじいさんに、街の詳細な部分まで描写しながら道案内をする箇所があります。ものすごい早さのフランス語と、画面の移り変わり。2人の歩いて行くテンポと音楽の絶妙なマッチングが、観ている私たちまで思わず笑顔にしてくれます。
ガイド自身、そのシーンが大好きで繰り返し観るのですが、その度に思うのは、フランス語名詞の単数形・複数形の区別が、カメラのシャッターのように目に見える風景を一瞬にしてとらえるのに、どれほど役立っているかということ。それでは、アメリと一緒にそのミラクルな世界をちょっとのぞいてみましょう。
「Venez, je vais vous aider, on descend et hop, c'est parti.」
(来て。案内するわ。車道に降りて。さあ、出発よ。)
片耳を無くした馬の看板:複数形の基本的な作り方
車道へ降りた二人は、「ご主人が亡くなって以来ずっと彼の制服を着続けている楽隊員の奥さん」の前を通り抜け、Attention, hop(アタンシオン オップ/気をつけて、それっ)と、反対側の舗道へ上がります。そこでアメリは、l'enseigne de la boucherie chevaline a perdu une oreille(馬肉屋の看板の馬が片耳を無くしてしまっている)という事実をおじいさんに告げます。「ほら 舗道よ 看板の馬の耳がないわ」と字幕では、画像を観れば「片耳」であるということがすぐわかるため、テンポよく見事にまとめられていますが、目の見えない人に対する情報の正確さという観点からみれば、une oreille(ユノレイユ/片方の耳)というフランス語単数の表現が、いかに簡潔かつ、正確に場面の状況を切り取ることができているかがわかるでしょう。仮に、この馬が両耳をなくしているならば、複数形のdes oreilles(デゾレイユ)を使えばいいわけです。
フランス語の複数形の一般的なつくり方は、英語のように語尾に-sをつけるだけです。つまり「単数形+-s」が基本。英語と違って、発音はそのままですが、先のune oreilleとdes oreillesの例にあるように、冠詞が、女性単数形の名詞につくune(ユヌ)から、複数形につくdes(デ)と変化するので、簡単にわかります。それでは、もう少し例をみてみましょう。
街に溢れる「メロン、棒つきキャンディー、チキンの丸焼き」
『アメリ』にでてくるのと同じPierrot Gourmand社のキャンディースタンド 画像提供:スリーアール(画像クリックで、購入ページへ。) |
また、「Chez le boucher, il y a un bébé qui regarde un chien qui regarde les poulets rôtis.」(肉屋では、赤ちゃんが犬を犬がチキンの丸焼きを見ている。)という箇所では、un bébé(アン べべ/赤ちゃん)とun chien(アン シアン/犬)が単数形、les poulets(レ プレ/とり肉)が複数形ですので、犬が見ているチキンの丸焼きが一つでないことは、画像を見ないでもフランス語では、はっきりわかりますよね。
まだまだ続くアメリの道案内。次ページでは、特殊な複数形のつくり方がわかります。