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韓国映画『ラブストーリー』が人気の理由!魅力を解説

韓国映画『ラブストーリー』は母と子2代の恋の物語。「클래식(クラシック)」という原題のこの映画には、韓国におなじみの人気女優のソン・イェジンが出演しています。映画『ラブストーリー』の魅力と、ポイントとなる韓国語と共にみていきます。

幡野 泉

執筆者:幡野 泉

韓国語ガイド

映画「ラブストーリー」! 思わず涙してしまう韓国映画...

韓国人がラブストーリーを好む理由を徹底解説!

韓国人がラブストーリーを好む理由を徹底解説!


ドラマ『夏の香り』、映画『私の頭の中の消しゴム』、『四月の雪』で、すっかり日本でお馴染みになった透明感あふれる韓国人女優のソン・イェジン。映画『ラブストーリー』は、そんな彼女が演じる母と子2代の恋の物語。思わずキュンとしてしまう恋の芽生え、胸が張り裂けそうな切ない別れ……。この映画に涙し、そしてその恋の奇跡に感動した方は多いでしょう。さて、この映画には韓国人のツボを刺激する、いくつかのキーワードが隠されているのです。そのキーワードとは? ポイントとなる韓国語と共にみてみましょう。
   

韓国映画『ラブストーリー』は世代を超えた恋の奇跡の物語

・첫사랑(チョッサラン)-初恋
ラブストーリー
母の初恋。そして信じたい愛の奇跡

母親の留守中に、母親が大切にしまい込んでいる手紙の束を開けることになったジヘ。差出人は、既に他界してしまっている父親の名前。母親は手紙をひらいては、読む度に涙するのでした。当然、父と母が結婚する前にやりとりした手紙だとジヘは思っているのですが……。

ク ソゲ オンマエ チョッサランイ イッタ-「その中に、お母さんの初恋がある」。意外な事実を持つ母の初恋は、世代を超えてジヘの恋と絡み合います。

・클래식(クルレシック)-クラシック、古典​​​​​​
『ラブストーリー』の韓国での映画名は、『クラシック』です。ジヘがふと母が大切にしまっている手紙を読んでみると、「朝、窓を開けるとさわやかな風が秋を知らせてくれます。その風を手紙に載せて、あなたに送ります」という書き出しが。それを見たジヘは、「チョンスロウォ、チョア、クルレッシッカダゴ ヘジュジ モ」-「ダサ。ま、いいか。古典的ってことにしてあげよう」。

このジヘの台詞。クラシック、古典、ノスタルジー、過ぎ去った時代を懐かしむ気持ち……。映画は、私たちを母親の初恋の物語へ招待してくれます。

・소나기(ソナギ)-夕立
ジヘの母、ジュヒは国会議員の娘。テスという許嫁(いいなずけ)がいます。しかし、ジュヒはテスの親友、ジュナと恋仲になります。

好奇心旺盛なジュヒは、ジュナを誘い、川の向こう側にあるお化け屋敷へ。日常生活から離れたところで戯れるふたりを夕立がおそいます。「ソナギエヨ」-「夕立です」。これはジュナの台詞。

『ラブストーリー』には『ソナギ(夕立)』という韓国の代表的な短編小説への複線がはられており、韓国人の情緒を刺激します。韓国人にとって、「夕立」は、「初恋」の香りがするのです。なぜ「初恋」の香りがするのでしょうか。

원두막(ウォンドゥマク)-番小屋
ジヘの母、ジュヒとジュナの切ない初恋は実りませんでした。しかし、その恋は世代を超えてジヘの恋に奇跡をもたらします。ジヘが大学構内の木下で雨宿りをしていると、思いを寄せるサンミンがやってきます。図書館に行くというジヘに、サンミンは上着を脱いで、一緒にその中に入って図書館まで行こうと促します。「チョギ インヌン コンムルル ウォンドゥマギラゴ センガッカヌンゴヤ」-「あそこにある建物を番小屋だと思うんだよ」。これは、そのときにサンミンが言う台詞です。

「夕立」-「番小屋での雨宿り」、世代を超えて、愛がはぐくまれていきます。ふたりが一つの上着をかぶり、雨の中を走りながら雨宿りするシーン。爽やかな主題歌も手伝い、この映画の中で最も美しいシーンかもしれません。その後、思いを確認し合ったふたりは、ジヘの母、ジュヒの初恋の思い出の川へと旅をします。そして、そのとき、サンミンがあるものを形見にしていることを知り、恋の奇跡に驚くのでした。
 

『ラブストーリー』と小説『ソナギ(夕立)』に見る共通項

ソナギ
韓国の代表的な短編小説『ソナギ』@韓国タリム社
韓国人なら誰もが知っているといって過言でない、『(ソナギ)』という小説があります。韓国の中学校の教科書に登場するほどの国民的な小説で、作者は、黄順元。1939年に早稲田大学の英文科を卒業し、韓国に帰国してからは数々の文学賞を受賞しています。短編小説『ソナギ』は、1953年、『新文学』4集の中で発表されました。早速、『ソナギ』の冒頭をみてみましょう。

少年は小川で少女を見、すぐに由緒正しい役人宅のひ孫だと分かった。少女は小川に手をひたし、水遊びをしている。ソウルではこんな川の水はみられない、とでもいうように。

そう、映画『ラブストーリー』でも、ジヘの母であるジュヒ(ソン・イェジンが一人二役)と、ジュナ(チョ・スンウ)の運命的な出会いは川です。そして、ジュヒは国会議員の娘とのこと。川での出会い、そして田舎者の男の子ジュナと、由緒正しい家柄のジュヒという組み合わせが、まさに『ソナギ』の少年と少女を思い起こさせます。

あの山の向こうに行ってみたことある? 行ってみない? 田舎は退屈でがまんできないの。

これは『ソナギ』の中の少女の台詞です。そう、映画『ラブストーリー』の中でも、ジュヒがジュナに「川の向こうに行ってみたい。お化けがでるって本当? 連れてってくれない?」と好奇心一杯の目をキラキラさせながら言うのでした。由緒正しい家柄が故に自由も少なく身動きがとれない少女が、少年に冒険を提案し、少年は心を躍らせる。ふたつの物語が交差します。

「あれは何?」-「小屋」-「このへんの真桑瓜は美味しい?」-「そりゃもう」

『ソナギ』で、山の向こうまで出かけたふたりは、花を摘み、かかしと戯れ、遊びます。真桑瓜畑から大根をとってきては、口に含んでみたり。少女が藤の花を取ろうとして斜面から滑り落ちそうになり、膝に怪我をしてしまうのですが、少年は傷口に思わず口をつけ、吸い出します。そんな自分の行動にびっくりする少年。うち解けそうで、まだうち解けられない、お互いを意識する二人の恥じらいが、初恋の甘酸っぱさを感じさせます。

『ラブストーリー』では、畑からスイカを採ってきて、割って食べたり、ジュヒが転んで怪我をしてしまったり……。日常から少し離れたところで戯れる、ジュヒとジュナの輝きは、まさに『ソナギ』の中の少年と少女のようです。

さあ、家に帰りなさい。夕立がくるよ。

山に出かけ、自然と戯れる少年と少女。しかし、突然の夕立に遭います。雨宿りをするふたり。肩と肩とが触れ合い、異性を感じる瞬間です。『ラブストーリー』でも同じく、ジュヒとジュナは雨に降られてしまいます。「ソナギエヨ」-「夕立です」。これはジュナの台詞。ふたりは畑の中にある番小屋へ駆けて行き、雨宿りをし、畑から採ってきたスイカを笑いながら食べます。

少年がしゃがみ込み、背を向けると、少女は素直におぶさった。

『ソナギ』では、夕立で出来てしまった泥の河を渡るために、少年が少女をおんぶします。『ラブストーリー』では、足をくじいてしまったジュヒをジュナがおんぶして、帰路につきます。あたりは真っ暗で、船着き場についたときは、ジュヒを心配する家族たちが待ちかまえていました。ジュヒはジュナに、お礼にとペンダントを渡します。雨に打たれたジュヒは体をこわしてしまうのですが、『ソナギ』の少女も体をこわして寝込んでしまいます。しかし、少女は数日後に小川に来て、庭でとれたナツメを少年に手渡します。あの日のお礼なのでしょう。しかし、少女はその後、病を悪化させてしまいます。

このように、『ラブストーリー』には、韓国人なら誰でも知っている『ソナギ』という小説のストーリーの複線が随所にはられています。韓国人は「ソナギ」というと、すぐ「初恋」という言葉を連想し、甘酸っぱく、切なく、悲しくなるのです。そして、自分の淡い初恋などを思い出しながら、ノスタルジック(クラシック)な気分になっているのでしょう。皆さんも、
「チョッサラン-初恋」、「-クラシック、古典」、「ソナギ-夕立」、「ウォンドゥマク-番小屋」これらの韓国語のキーワードを胸に、淡い初恋の世界に浸ってみてはいかがでしょうか。

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