フランス/フランスの観光・世界遺産

池、睡蓮、終の棲家ジヴェルニー モネの足跡をたどる(その3)(2ページ目)

落ち着いたピンクの館、広々とした花壇に咲き誇る季節の花々。道を渡れば、あの睡蓮の浮かぶ日本風庭園。功成り名を遂げた印象派の画家モネがついにたどり着いた理想のモチーフ。あなたもノルマンディの静かな村ジヴェルニーのモネの庭をのぞいて見ませんか。

執筆者:赤木 滋生

日本風庭園

広い広い花壇の南西の端には団体入口があり、そのすぐ横の地下道を通ると南側の日本風庭園に通じます。ここは広がりのある花壇とは打って変わった落ち着いたたたずまい、高い木々の間を静かに流れるせせらぎ。葉の間からの木漏れ日を楽しみながら歩いて行くと、幾度となくモネの作品で目にしたきらきらと光を反射する池にあの可憐な睡蓮が浮かんでいます。

日本から来た我々にとっては、その風景だけをとれば見慣れた和風の庭園です。特にモネの作品を知らぬまま見た人にとっては感動は薄いかもしれません。ところが、あの同じ風景を描いたにもかかわらず、微妙な変化を見せるモネの作品群を充分見た者の目にとっては、その印象は大きく異なります。

木々に直接射す光はもちろん、水面に反射する光、葉を透過する光、影に回りこむ光、様々な光と影が、季節や時間、気候によって移り行き、受ける印象の違いが実感できます。存在をありのままに描いた写実主義の時代を経て印象主義に行き着いたモネにとって、これこそ常に変化し続ける受け手の印象を生かすことの出来る最適なモチーフであることがよくわかります。

体は年々不自由になり、落ちて行く視力に悩まされ続けた晩年のモネにとって、庭に出れば必ず新たな印象と感動を与えてくれた理想のモチーフ、もしこの地に長く滞在することが出来るなら、春の新緑に映えるやわらかい光や夏の強い光と濃い緑、秋の紅葉と低い位置から差し込む光など、四季によって移り変わるモネの世界にどっぷりと浸ることが出来るに違いありません。

ゆっくりとモネを堪能したいのは山々ですが、ここは超のつく人気観光地とあって世界中からの観光客が押しかけ、ジャパンブリッジも人の山、おちおち睡蓮を楽しむことが出来ない場合もしばしばです。特に春から初夏にかけては大変です。睡蓮の季節は7月末から8月一杯、もし睡蓮の花咲く池をどうしてもご覧になりたければ入場者の落ち着く8月後半が良いでしょう。10月なら睡蓮の花は無いものの、ゆっくりと紅葉に色づいた木々の映える、黄金色に輝く秋の池を楽しめます。モネの庭を本当に味わうにはこれらシーズン外れも良いかもしれませんね。
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