春彦の姪・紗希の友だちがメル友に写真を送ると言っているらしい。麻季子と春彦はそれを止めさせようと、色々な事件例などを挙げて紗希に怖さを教えようとする。さらに大人の危険についても。
ケータイカメラ
女の子のケータイ |
「写真って、ネット上に掲載されてしまったら、絶対に消せないのよ。それは分かるでしょう? 一度出てしまったら、永遠にネット上に残るのよ。もし怪しいサイトで使われちゃったら、その子の将来にも影響があるかもしれない。大人になっても昔の写真ってことでヘンなサイトで使われていたって知られたらよくないでしょう?」
「でも、写真の交換だから。相手も送ってくるんだから」
「相手が自分の本当の写真を送ってくるかどうか分からないでしょ? 別人の写真かもしれないのよ」
紗希は唇を少し突き出すようにして、首をひねった。
「だけどさあ、みんな携帯のカメラで撮った写真を送りっこするよ。友だち同士ならいいじゃん」
「だから、信用できるかどうか分からないってこと。実際に会ったことのある知り合いならいいけど、会ったこともない人にはどうかな」
「だって、そしたら誰が本当に子どもか分かんないじゃん。それ以上付き合えなくなっちゃうじゃない」
「写真を送らなければ友だちになれないっていうなら、そういう子とは付き合わないほうがよくない?」
「ふ~ん。よく分かんない」
春彦が身を乗り出してきた。
「紗希ちゃん、おじさんが知ってる話でね、あるテレビに出ていたタレントさんがね、若いときに裸の写真を撮っていたことがあったんだ。その後、がんばって有名になったけど、いつまで経ってもいくら頑張っても『裸の写真の人』ってことで、世間が抱くイメージは変わらない。つまり、一度写真が世の中に出てしまったら、取り戻すことは出来ないんだ。だからこそ、写真には注意しなくちゃと思うんだよ」
「でも、ただの顔写真だよ?」
春彦の説明がピンと来なかったようで、紗希は不服そうだ。今度は麻季子がまた話し出した。
「子どもの写真を集めている人もいるのよ。前に男の人が子どもの写真を集めて勝手に自分のホームページに載せて子どもたちの家族にすごい迷惑をかけたことも事件としてあったの。ネット上に公開したり、一度送ってしまった写真はどこでどう使われるか分からないというのはそういうことなのよ。もちろん、悪いことをする人ばかりだとはいえないけど、ネット上に載った写真はいつまでもずっと残るし、世界中の人が見ることができるのよ」
「だけど、みんなフツーに写真を撮って交換したりしてるよ」
「仲がいいときはいいけど、仲が悪くなったらどうする?」
「削除する」
あっさりと紗希がそう言った。
「そうなんだけど、中には削除しないでその写真にヘンなことをしたり、ネット上に流していやがらせをする人もいるかもよ。まあ、これは大人でも同じなんだけどね。後ね、子どもでも好奇心の強い子は危ないことをやってみたくなるでしょ? やはり以前にね、小学生の女の子何人かが渋谷に遊びに行くって言って、大人の男の人と知り合って、その人の家に閉じ込められちゃったことがあったの」
「例の、その男が自宅マンション内で自殺した事件だな」
春彦が足を組みなおしながらうなずいた。
→・母親の決断
→→・プチ家出
→→→・画像は取り戻せない/あなたの一票/関連防犯ガイド記事