防犯/防犯小説

ミセスの危機管理ナビ~男の陰謀・女の無謀

何かが起きるかもしれないと麻季子が予測していたホワイトデー。嵐は春彦が社に戻ってから発生した。文恵の行動の本当の意味、立川の言い分とは?

佐伯 幸子

執筆者:佐伯 幸子

防犯ガイド

を先にご覧ください。

何かが起きるかもしれないと麻季子が予測していたホワイトデー。嵐は春彦が社に戻ってから発生した。文恵の行動の本当の意味、立川の言い分とは? 

嵐の訪れ

3月14日金曜日の午後、春彦は取引先を2軒回っていた。予定帰社時間は午後6時としていたが、出先で手間取り午後8時を過ぎることになりそうだった。6時少し前に会社に連絡を入れると、横井文恵が電話を受けた。遅れる旨を伝えるとかすかに戸惑いの気配が感じられた。だが、すぐに連絡事項を春彦に伝えると、帰社予定を再確認して電話を切った。

星野美穂と食事に行くと言っていたが、どうするつもりなのか、春彦には分からなかったが、とりあえず問題の日なので、北村隆二にも連絡を入れて、帰社予定を伝えた。隆二も社に残って業務を続けているという。午後8時を少し回って社に戻ると、部内には横井文恵だけが残っていた。

「お、横井さん、遅くまでがんばってるね。金曜日なのに用事はないの」

と、何気なく尋ねると、

「ええ。まだ仕事が残っているので」

残務処理
残務処理
と、素っ気無い返事が返ってきた。金曜日なので、残業することもないだろうにと思いながら、席について残務処理をしていた。隆二は部内にはいないが社内にはいるはずだ。だが、春彦が帰社したことは承知しているはずだった。携帯電話にメールが着信して、見ると隆二からだった。

「横井女史と2人だけじゃないですか? まずいことがありそうだったら、すぐに連絡してください」

と書いてあった。何かが起きるとも考えられなかったが、横井文恵は自分の席で何か作業をしているようだった。30分ほど時間が経ってから、気がつくと文恵が携帯電話をパチンと閉じて、こちらを見ていた。

「横井さんももう遅いから帰ったら。もうみんな帰ってしまっただろう。僕もそろそろ帰るつもりだ」
「ええ。そのつもりなんですが……室長」
「ん?」
「……いえ。あの、じゃあ、こちらの電気は消していいでしょうか」
「あ、うん。いいよ。後は僕がやって帰るから」

室内の2/3の明かりが消されて、文恵がいる辺りが暗くなった。表情が読み取れない。自分のほうを見ている感じは分かったが、春彦は無視して書類に目を通していた。文恵が立ち上がった様子を視界の端で確かめていたが、突然、

「あっ……」

と、文恵が倒れこんだようだった。ただならぬ気配に驚いて、そちらを見ると、床にしゃがみ込んで一方の手がデスクの上に残っていた。うめくような声がしたので、声をかけた。

「横井さん、どうした?」
「う……ん」

具合が悪くなったのか、貧血でも起こしたのだろうか? 声をかけても返事がなかったので、立ち上がって見てみると、苦しそうにうなっているようだった。

  • →男の陰謀
  • →→女の無謀
  • →→→敵対心/あなたの一票/関連ガイド記事
  • →→→→あなたの一票結果と寸評
    • 1
    • 2
    • 3
    • 5
    • 次のページへ

    あわせて読みたい

    あなたにオススメ

      表示について

      カテゴリー一覧

      All Aboutサービス・メディア

      All About公式SNS
      日々の生活や仕事を楽しむための情報を毎日お届けします。
      公式SNS一覧
      © All About, Inc. All rights reserved. 掲載の記事・写真・イラストなど、すべてのコンテンツの無断複写・転載・公衆送信等を禁じます