防犯/防犯小説

ミセスの危機管理ナビ~大人の見識・不見識

横井文恵の行動の思惑はどこにあるのか? 4人で話し合いをしていたところ、麻季子の発言に対して、春彦が大人の判断で答える。そして、ホワイトデーを間近に控えたある日、新しい情報と展開が……。

佐伯 幸子

執筆者:佐伯 幸子

防犯ガイド

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横井文恵の行動の思惑はどこにあるのか? 4人で話し合いをしていたところ、麻季子の発言に対して、春彦が大人の判断で答える。そして、ホワイトデーを間近に控えたある日、新しい情報と展開が……。

大人の良識

4人で飲みながら
4人で飲みながら
星野美穂と春彦が会う場面を誰かに見せるか、写真を撮るなどしてその写真自体を問題にするのではないか? という麻季子の指摘に、その場にいた誰もが「あっ」と思わず口を開いていた。

「ねえ、きっとそうじゃない? あなたにとって不利なことをしようとしているんじゃないの?」
「……」
「だとしても、いったいなんででしょうか?」

春彦が黙っているので、北村が疑問を投げかけた。

「たとえ先輩に不利な状況を作るのだとしてもその目的が分からないですよ? 単なる嫌がらせですかね。先輩に受け入れてもらえなかったことに対する恨みとか」
「でも~、だからそこを探るんじゃない。そのためにメールを返信して会ってみたら分かるかもってことでしょ?」

詩織が少しワクワクした様子でそう言ってから、春彦が押し黙っていることに何か感じたように唇を指で押さえた。麻季子は夫の表情を横から見ると、なんだか怒っているように思えて、やはり話すのをためらった。北村も雰囲気を察して、思い出したように料理の皿に箸を伸ばした。しばらく料理を食べたり、お酒を注ぎあったりして、なんとなく話題から遠ざかっていると、春彦がグラスを置いて、ちょっと咳払いをした。

「オレが思うに……」

他の3人が緊張したように春彦を見て、黙って次の言葉を待った。

「この件は考えすぎのような気がする。たしかにおかしな話だ。なぜ横井さんが星野さんの名をかたってネクタイを贈ってきたのか。それは分からない。当人にしか分かるはずもないだろう。だが、オレの立場からすれば、無視すればいいだけのことじゃないか? バレンタインのお返しは当たり前にすればいい。ネクタイのことは知らないふりをすればいい。使わなければいい話だしね」
「隆二さんが使うわけにもいかないですよね」

詩織がそう言ってしまってから、急いで口をつぐんだ。

「個人的なメールが来たからといってそれに返信するのもよくない。向こうが返事を望んでいるのであればなおのこと、無視するしかないだろう。ヘンな証拠を残すのもよくない。だいたい何ていって返事をするんだ? 要するに何もしないことしかないんだよ。何もしなければ、もしそれ以上向こうが何かを望むならまた何か行動を起こすだろう。そしたらそれに対してまた常識的に考えればいい。冷静に考えれば、慌てて何か行動を起こすことはかえって物事をおかしくする。それが大人の良識だと思う。つまり、何もしないことがこの場合、正しいと思うんだ。麻季子、どう思う?」

突然、話を振られて麻季子はちょっと戸惑った。

「そうね。たしかに、こちらから何かをする、というのはよくないと思う。あなたが言うように何もせずに、次に向こうが何をするか待つ、というか、様子を見るべきなのよね、きっと。ただ、問題は残るけど……」

それがどういう問題なのか、他の3人も分かっている気がした。

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