女の思惑
「それしか横井女史の思惑というか意図を知る方法がないと思うんです。会う約束をして、その場に誰が来るか確かめるんですよ」「いや、しかし、形の上ではオレと星野さんが会う約束をするんだから、星野さんが来るんじゃないか?」
「実際には横井女史だけが来るこもあり得るかもしれません。星野さんの名をかたったけど、実は自分だったんです、とか。もしくは星野さんを騙してその場所に来させるかも。先輩が会いたいと言っているとか嘘をついて」
「星野さんは自分の名前だけで送られたことを知らないわけだろ? 仮にオレと2人で会っても話がかみ合わないじゃないか」
「そこなんですよねえ。そうなるとどう考えたらいいのか」
料理と会話 |
「横井女史が、最近、素っ気無くなっていたと言ったでしょ? だから、単純に女史が会いたいという目的ではないような気がするの。それより、星野さんの名前を使ったのだから、星野さんとあなたを会わせることが目的なんじゃない?」
「何のために?」
「星野さんには事前に何か適当に伝えておくかもしれない。話が合わなくてもかまわないのなら、とにかく2人を会わせることが狙いなんじゃないかしら」
「分からないなあ。会っても何にもならないじゃないか」
「でも、メリットがなければこんなことをするはずないでしょ。推理小説でいう『フー・ダニット~Who done it?』つまり誰がやったか? は分かったとして、『ホワイ・ダニット~Why done it?』なぜやったか、動機や目的が知りたいのよね。動機にはやはりメリットが必要でしょ?」
「こんな訳の分からないことをやって何のメリットがあるんだ?」
「問題はそこよね。仮に横井女史があなたのことを好きだったとして、2人が会うのを見て楽しいはずはない。すでに好きではないとしても、2人が会うことで彼女が得られるメリットが何かあるんじゃないかしら。2人が会う場面に意味があるような気がするわ」
「男女2人が会う場面っていったら、不倫、密会、ラブシーンってイメージですよねぇ」
詩織が酒の勢いのせいか楽しそうに言ってから、失言したというようにチロリと舌を出した。すると、北村がうなずきながら続けた。
問題になることが目的? |
すると、麻季子がアッと言うように、両手を顎の下あたりで合わせた。
「ねえっ! 問題になることが目的なんじゃない? 2人だけで個人的に会っている場面を誰かに見せるとか、写真に撮るとかして問題にするのよ!」
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