盗撮写真?
付き合い始めて2~3ヶ月 |
「付き合い始めて2~3ヶ月なんですが、まだ社内の誰にも話していないんです。先輩にはすでに話しましたけど。将来的にどうするかもまだ決めていなくて。互いに結婚の話はしたことがないし、彼女は高野詩織といって23歳ですが、元々結婚の意志があまりない女性なんです。まあ、僕もそれほどあせる必要はないと思ってますし」
「まあ、まだ数ヶ月なら将来のことは分からんよな」
「ええ、まだ始まったばかりなので、互いのことをよく知るにはもっと時間をかけたほうがいいと。それに社内恋愛はわが社ではちょっと微妙なもので」
春彦が麻季子のほうを向いて言った。
「ほら、以前話しただろ? 不倫で自殺騒ぎがあったって」
「ああ、女性が薬を飲んで救急車で運ばれたって事件ね」
「あれは男のほうが悪かった。妻と離婚するって言って付き合ったそうだから。女房に二人目の子どもができてだまされていると分かって。結局、致死量じゃなかったから女性は助かったが退職して、男のほうも左遷されたが」
「去年の春ごろのことだったかしらね」
「まあ、それ以来、社内では男女の仲に敏感になった感じでね。というか社内恋愛はご法度という無言の規制ができたようなんだ」
「ちゃんとしたお付き合いをする人たちからしたら迷惑な話よねぇ」
メールにショックを受ける |
「ホテルに行ったことを脅迫? でも、独身同士なら脅迫にならないじゃない」
「ええ。不倫じゃなくて普通の恋愛関係ですからね。でも、ただ見たというだけじゃなくて、盗撮をして、人に見られたら困る写真を撮ったと書いてあったんです」
「盗撮?」
麻季子は思わずポカンと口を開けてしまった。
「でも、書いてあっただけでしょ? 写真を添付していたわけ?」
「添付写真はなかったです。ただ、向こうの要求に応えないとその写真をばらまくぞ、と書いてありました」
「その写真って」
「彼女の裸の写真だと」
「まあ」
ちょっとした沈黙があり、春彦がお茶をすすった。北村は唇を噛み締めるようにしていた。
「それじゃ、ホテルに盗撮カメラを仕掛けてあったということ? でもそんなこと簡単に信用していいのかしら」
「実は、普通のシティホテルじゃなくて、ラブホテルだったんです。だから、あり得るかもしれないと彼女も不安がって」
「あてずっぽうで書いてきたんじゃないの?」
「いや、実際にホテルに行った翌日に、『昨日、ホテルで盗撮した』と書かれたメールが来たんです。つまり、少なくとも誰かが実際に目撃しているってことだと思うんです。盗撮をしたかどうかは別として」