防犯/防犯小説

ミセスの危機管理ナビ~メール脅迫者を追え

【連載第1回】おまかせマッキーこと加瀬麻季子(38歳)は、身近なトラブルを解決することが多い。ある日、夫の春彦が部下で後輩の北村を連れて帰宅した。なにやら相談があるらしいのだが……。(全4回)

佐伯 幸子

執筆者:佐伯 幸子

防犯ガイド

おまかせマッキーこと加瀬麻季子(38歳)は、身近なトラブルを解決することが多い。ある日、夫の春彦が部下で後輩の北村を連れて帰宅した。なにやら相談があるらしいのだが……。

脅迫メール

お邪魔します。
お邪魔します。
主婦・麻季子の夫・春彦がある金曜日の晩、部下で後輩の北村隆二を連れてきた。27歳で今風の真面目な青年という感じだ。夫と同郷で大学の後輩でもあるという。春彦と一回りほど年が離れていても、間の年代でそれぞれに共通の知り合いがいるので、通じる話題も多いらしくけっこうかわいがって親しくしているようだ。よく一緒に飲んできたということも聞いている。

「こんばんは。今日はすみません。ご迷惑をおかけします」
「いらっしゃい。こんばんは」
「北村君がちょっと困っていることがあるというんでね。食事はしてきたから」
「そ? ま、とにかくどうぞ、上がってください」
「はい。お邪魔します」

春彦が後輩から相談を受けると言っていたのは北村のことだったのだと分かった。北村はリビングのソファに座ると、神妙な顔で膝の上で両手を組んだ。

「何をお飲みになる? ビール?」
「いや、真面目な話だからお茶でいいよ。な?」
「あ、どうぞおかまいなく」

麻季子はお客様用のウェッジウッドのティーカップを温めてて、時間をかけて丁寧にいれたダージリンを注いだ。春彦と北村の前にお茶を差し出してから下がろうとすると、春彦が言った。

「麻季子も座ってよ。第三者の意見も聞きたいから。北村君も上着とネクタイを取ったら」
「私も? そう、じゃあ」

ネクタイをはずして
ネクタイをはずして
普段使いの自分のティーカップに紅茶を注いでソーサーに載せて持ち、リビングに戻ると春彦の隣に座った。二人とも上着を脱ぎネクタイをはずしてリラックスしているように見えた。

「すみません。でも、奥さんのお考えも聞きたかったものですから」
「まあ、ウチのやつは口は堅いから」
「いや、加瀬先輩の奥さんですからそのへんはまったく心配していません。あの、洞察力があるって聞いたことがありますし」
「あら、そんな」

洞察力があるなんて、春彦がどんな話をしているのかと思ったが、余計なことを言うより、今は話を聞かなくてはと北村のほうに気持ち体を乗り出した。春彦も黙っている。

「さっき先輩にはチラッとお話したんですが、ちょっとトラブルというか困ったことが起きまして…」

夫婦とも何も言わずに北村をうながした。

「実は、僕、社内に彼女がいるんですけど、その彼女に脅迫メールが来たんです」

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