防犯/防犯小説

女の事件白書~恐怖のエレベーター(下)

27歳会社員・蓉子が深夜のエレベーターで襲撃された。悲鳴を聞きつけた住人がドアの隙間から様子を伺っていたので、蓉子は近づいていき助けを求めた。

佐伯 幸子

執筆者:佐伯 幸子

防犯ガイド

「女の事件白書~恐怖のエレベーター(上)」
を先にご覧ください。【全2回】

《前回のあらすじ》27歳の会社員・蓉子が深夜、自宅マンションに帰り着きエレベーターに乗ったところ、突然乗り込んできた男がいた。いきなり抱きつかれて驚愕したところ、ドアが開き、蓉子は必死で飛び出し、ドアの隙間から見ていた人に声をかけた。

救い

声がかすれて
声がかすれて
「あの、すみません。警察に、電話、してもらえないでしょうか」

蓉子はかすれた声で精一杯そこまで言うと、思わず涙がこぼれた。

「どうしたんです? 何があったの?」
「あの、エレベーターの中で、男に、襲われたんです」

その家の玄関ドアがいったん閉まり、チェーンを外す音がしてから開いた。顔を知っている女性が出てきた。

「今、主人が警察に電話してますから。大丈夫?」
「えぇ。すみません」

今度は女性の夫が出てきた。こちらも顔は見たことがある。

「今、110番しましたから。パトカーがじきに来ますよ」
「すみません」
「ケガはないですか?」
「あ、えーと、多分」
「あらでも、首のところが赤くなってる。あ、頬のあたりも」

見ると、半袖のブラウスから出ている腕のあたりが赤くなっていた。頬は見えないが、手でさわると痛みがあった。

「ちょっと待ってね。冷たいタオルを持ってくるから」
「あ、いいよ。俺が持ってくる。君はこの人のそばにいてあげたほうがいい」
「そうね、じゃお願い」

男性と二人きりになるのは恐かったので、二人の心づかいがありがたかった。また泣いてしまいそうになり、蓉子は思わず下を向いた。パトカーが来るのがただ待ち遠しかった。
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