防犯/防犯小説

ミセスの危機管理ナビ~男と女の化学反応

【連載第4回】リョウ君と泉の会話と、友だちにかけたらしい携帯電話の話の中身から、男の本性を見た麻季子は詳細を泉に報告する。そして、泉がなぜ、男遊びをしてリョウ君にハマったのか、泉の過去から分析する。

佐伯 幸子

執筆者:佐伯 幸子

防犯ガイド

連載第1回「ミセスの危機管理ナビ~独身美女の仕事と男」
連載第2回「ミセスの危機管理ナビ~男と女の間のウソ」
連載第3回「ミセスの危機管理ナビ~男の本性、見たり!」
を先にご覧ください。【全4回】

《前回までのあらすじ》泉とリョウ君が会うことになり、カフェの隣の席で麻季子は一部始終を目撃する。そして、リョウ君が携帯電話で話した内容も聞いてしまう。泉と落ち合って麻季子は聞いたことを報告して、泉の心理について考えを話すことに。

芝居の後で

カフェからリョウ君ことトオルが立ち去り姿が見えなくなってから、携帯電話で連絡を取り、麻季子は泉の待っているホテルまで歩いて行った。ロビーのソファに座っていた泉が立ち上がって近寄ってきた。

「ごめんね~、マッキー。お詫びに夕食おごらせて」
「あら~、いいの? じゃ、ご馳走してもらおうかな」
「実は予約を入れてあるの。和食でいい? 湯葉が美味しいのよ」
「あら、いいじゃない」

坪庭のある和風の店で
坪庭のある和風の店で
ホテルを出てしばらく歩いてから、高層のビジネスビル地階のレストラン街に降りた。フロアの一番端まで歩くと黒塗りの木の塀で囲まれた和風の店があり、靴を脱いで座敷に上がると、一番奥の席に通された。ガラス窓の外には坪庭がある。

「素敵なお店ねえ。とてもビルの地下とは思えない」
「静かだしね。お味もいいし、女性客が多いから安心でしょ」
「ほんとね」

客の八割方が女性客だった。タバコの煙もなく、静かで落ち着いた雰囲気が上品な店だ。泉がメニューをサッと見て言った。

「コースでいいわよね。飲み物は日本酒? それともワイン?」
「そうねぇ。じゃ、私は白ワインをグラスで」
「そ? じゃ、私は赤にしよう」

和風のユニフォームに身を包んだ店員にテキパキと注文すると、おしぼりを使って軽くたたんでから、泉が両手をついて麻季子に頭を下げた。

ワインは赤と白
ワインは赤と白
「今日は本当にありがと。ごめんね。変なことに付き合せちゃって」
「いいのよ。でも、イズミーはお芝居がうまいわね。それにさすが、仕事の話はすごいわねぇ。リョウ君、ビックリしてたじゃない」

「いやー、なんかねぇ。マッキーと話してから、私もいろいろと考えたんだけど、やっぱりちょっとおかしいものね」
「ちょっとどころじゃないわよ。そうだ、イズミーの年齢、バレてたわよ」
「え? どういうこと?」
「あなたが立ち去ってからすぐに誰かに電話してた。私、全部聞いちゃった」

麻季子はリョウ君が話していたことを出来るだけ忠実に再現してみせた。リョウではなくトオルらしいということも。

「ふーむ。トオルね。まあ、どっちでもいいんだけど」
「出会いのきっかけがきっかけだから、どっちもウソなのね。あ、だからそれで、あなたの免許証をこっそり見たって。いつどこでか覚えある?」
「うーん。そうねえ。あー、シャワーを浴びたとき、うっかりバッグを部屋に残していたときがあったかも」
「財布に入れていたの?」
「うん」
「お金は盗られてなかった?」

  • →無意識の挫折?……p.2
  • →→三十代の知恵………p.3
  • →→→年なりの分別………p.4
  • →→→→孫子の兵法/あなたの一票/関連防犯ガイド記事……p.5
    • 1
    • 2
    • 3
    • 5
    • 次のページへ

    あわせて読みたい

    あなたにオススメ

      表示について

      カテゴリー一覧

      All Aboutサービス・メディア

      All About公式SNS
      日々の生活や仕事を楽しむための情報を毎日お届けします。
      公式SNS一覧
      © All About, Inc. All rights reserved. 掲載の記事・写真・イラストなど、すべてのコンテンツの無断複写・転載・公衆送信等を禁じます