連載第2回「ミセスの危機管理ナビ~男と女の間のウソ」
連載第3回「ミセスの危機管理ナビ~男の本性、見たり!」
を先にご覧ください。【全4回】
《前回までのあらすじ》泉とリョウ君が会うことになり、カフェの隣の席で麻季子は一部始終を目撃する。そして、リョウ君が携帯電話で話した内容も聞いてしまう。泉と落ち合って麻季子は聞いたことを報告して、泉の心理について考えを話すことに。
芝居の後で
カフェからリョウ君ことトオルが立ち去り姿が見えなくなってから、携帯電話で連絡を取り、麻季子は泉の待っているホテルまで歩いて行った。ロビーのソファに座っていた泉が立ち上がって近寄ってきた。「ごめんね~、マッキー。お詫びに夕食おごらせて」
「あら~、いいの? じゃ、ご馳走してもらおうかな」
「実は予約を入れてあるの。和食でいい? 湯葉が美味しいのよ」
「あら、いいじゃない」
坪庭のある和風の店で |
「素敵なお店ねえ。とてもビルの地下とは思えない」
「静かだしね。お味もいいし、女性客が多いから安心でしょ」
「ほんとね」
客の八割方が女性客だった。タバコの煙もなく、静かで落ち着いた雰囲気が上品な店だ。泉がメニューをサッと見て言った。
「コースでいいわよね。飲み物は日本酒? それともワイン?」
「そうねぇ。じゃ、私は白ワインをグラスで」
「そ? じゃ、私は赤にしよう」
和風のユニフォームに身を包んだ店員にテキパキと注文すると、おしぼりを使って軽くたたんでから、泉が両手をついて麻季子に頭を下げた。
ワインは赤と白 |
「いいのよ。でも、イズミーはお芝居がうまいわね。それにさすが、仕事の話はすごいわねぇ。リョウ君、ビックリしてたじゃない」
「いやー、なんかねぇ。マッキーと話してから、私もいろいろと考えたんだけど、やっぱりちょっとおかしいものね」
「ちょっとどころじゃないわよ。そうだ、イズミーの年齢、バレてたわよ」
「え? どういうこと?」
「あなたが立ち去ってからすぐに誰かに電話してた。私、全部聞いちゃった」
麻季子はリョウ君が話していたことを出来るだけ忠実に再現してみせた。リョウではなくトオルらしいということも。
「ふーむ。トオルね。まあ、どっちでもいいんだけど」
「出会いのきっかけがきっかけだから、どっちもウソなのね。あ、だからそれで、あなたの免許証をこっそり見たって。いつどこでか覚えある?」
「うーん。そうねえ。あー、シャワーを浴びたとき、うっかりバッグを部屋に残していたときがあったかも」
「財布に入れていたの?」
「うん」
「お金は盗られてなかった?」