だまされてもいい?
あきれるマッキー |
「でもほら、まだ若いから。いいのよ。彼と話しているとホントに楽しいの。夢の手助けをしてあげたいのよね。彼ならちゃんとやれるような気がするの。信じてあげたいのよ。でね、今度その友だちと会うっていうから、マッキー付き合ってくれない?」
「なんで私が行かなくちゃならないの。だいたいねえ、おかしいって。やめなさいって」
「でも、ちゃんとお互いにホントの名前を言って、ビジネスとして付き合うってこともアリでしょ」
「じゃあ、免許証を見せるなり、住民票を出せって言えば」
「普通、男女の仲でそういうことってするかな」
「だから、出会い系サイトで出会って、Hしただけの仲じゃないの?」
「それで結婚した人だっているはずよ」
確かに出会い系サイトがきっかけとなって結婚した男女もいるだろう。だが、結婚してもいないうちから金を出させようとするなんて、どう考えてもおかしい。なぜ、そんな簡単なことに泉は気づかないのか。
「でも、互いに本名も知らないうちにお金を出せなんていう男でしょ?」
「別に無理やり出せなんて言ってないわよ。会社を興すから出資してくれってことだから」
「で、お金だけ持ってドロンってなったらどうすんの? それとも、100万円くれてやるってこと?」
「そんなつもりはないけど。でも、お願いされちゃったから」
「お願いされたから」 |
「うーん。結婚するとしたら私の年齢もバレるしね」
「そういう問題じゃないでしょー。あなたは今、名前も住所も素性も知れない男に大金を渡そうとしているのよ? 自覚してる?」
「そうよねぇ。実はこの間、あやうくATMに一緒に行くところだったのよ」
「……。ねえ、もう何も言えない。でも言う。やめなさい。すぐに別れるべきだと思う」
「うん。マッキーの言うことも分かる。でもだまされてもいいかなって思ったりもするのよ」
「……。いいわ。とにかく、今度会うってのはいつなの。私は同席はしないけど、そばの席からそのリョウ君とやらを見させてもらうわ」
リョウ君と会う日程や場所が決まったらまた連絡するということで、とりあえず電話を終えた。麻季子はぐったりとうなだれてしまっていた。あの頭のいい泉がいったいどうしたことなのか。出会い系サイトで出会ってその日のうちに関係を持つことも信じられないが、お金を要求する男も信じられない。そしてすぐにもお金を出してしまいそうな泉が一番信じられなかった。イケメンだと泉は言っていたがどの程度のものなのか、その点には麻季子も興味があった。電話のそばで物思いにふけっていると、夫の春彦が帰ってきた。