連載第2回「ミセスの危機管理ナビ~聞き戻せない電話」
連載第3回「ミセスの危機管理ナビ~推理から見えたもの」を先にご覧ください。【全4回】
《前回までのあらすじ》絵里から年賀状の差出人の情報を聞いて、麻季子は背景を推理した。預かった年賀状から竹下美枝の1枚を選び出して、書かれていた電話番号に麻季子が直接、電話をかけた。
待ち合わせ
力になれるかもしれない |
「理由って…」
麻季子は一瞬迷ったが、ハッキリ言ったほうがいいと思い口にした。
「年賀状と電話の件です」
「なんで…」
「誤解なさらないで。私、一方的に責めるつもりとかは全然ないんです。ただ、もしかして悩んでいたり、困っていることがあれば、話を伺うだけでも違うんじゃないかと思うものですから」
「……」
「私も小学生の子どもがいる母親ですし。もし、お話を伺っても黙っていたほうがいいということでしたら、絵里さんにも何も言わないとお約束します。それで、もしよかったら近いうちに、明日にでもお会いしませんか?」
「…私、娘が幼稚園に行っておりますから、明日午前中なら…」
フルーツツリーの前で |
翌朝、麻季子は大きなバッグを抱えてパンツスタイルで臨港パークに向かった。日焼け止めを塗って帽子も被った。フルーツツリーのそばまで来ると、日傘を差したスカート姿の女性がいた。
「あの、竹下美枝さんですか?」
「はい」
「あ、私、加瀬麻季子です。初めまして。すみません。お呼びたてしてしまって」
「いえ、こちらこそ」
麻季子と直接視線を合わせないように目をふせながら、美枝が頭を下げた。
「フルーツツリーって、子どもが喜びますよね。果物の木だあ~って」
美枝の気持ちをほぐそうと麻季子は明るい調子で話を振った。
「ええ」
「すごく大きいから子どもなんかホント小さく見えて。写真に撮るとちょっと不思議な感じで」
「うちの子もここで写した写真があります」
美枝はつられて少しはにかむように小さく微笑んだ。ふたりでゆっくりと海に向かうように歩きながら、適当な木陰を見つけてその下に座ることにした。