連載第1回「ミセスの危機管理ナビ~切り裂かれた年賀状」
連載第2回「ミセスの危機管理ナビ~聞き戻せない電話」を先にご覧ください。【全4回】
《前回までのあらすじ》絵里の息子が不審な電話を受けたということで、電話への子どもの応対についてなど話をした。さらに、絵里宛の年賀状を途中まで見たところで帰宅することに。夜になって、絵里から電話がかかってきた。
絵里の息子が受けた電話はいったい誰から? 絵里に届いた年賀状から、麻季子がその人物を探り出そうとする。絵里の言動も気になる麻季子だった。何か見えない裏の理由がありそうだが…。
電話の声
おばさんだったの? |
「もしもし、あー雅斗クン? ねえ、ヘンな電話の声って、こんな感じじゃなかった? いい?」
麻季子は一方の手のひらで口と鼻を覆うと、雅斗の言っていた内容を口にした。
「子どもに気をつけるようにママに言いなさい」
ハッと驚いたような様子がして、雅斗が言った。
「あれー、なんで? おばさんだったの?」
「違うわよ。でも、こんな感じの声だった?」
「うん。そっくり。そんな声だった。ねえ、ママ、翔太クンのママだったのかな」
そう言いながら、受話器が絵里に手渡されたようで、絵里が電話口に出た。
「もしもし? どうしたの? 何をしたの?」
「あのねえ、今、手のひらで口を覆って話したのよ。そしたら、そんな声だったって雅斗クンが言ったの。こんな感じ」
もう一度、同じようにして声を出した。
こんな感じの声? |
「もう一度、雅斗クンを出してくれる?」
「マー君、もう一度出て」
「うーん?」
「あ、雅斗クン、ねえ、ママに言いなさいって、言った? それともお母さんに言いなさいって言ってた?」
「えーと、うーんと。ママに言いなさいって言った」
「お母さんとは言わなかった?」
「うん」
「もしもし? 何か分かったの?」
「うん。私の想像だけど、多分、女よ。本当はあんなことを言うつもりはなかったんじゃないかな。雅斗クンが電話に出たから、その場でパッと思いついて言ったんじゃないかしら。もし、男だったら、もっと準備してると思う。たとえば、ボイスチェンジャーなんかを使うとか。あの、声を変える機械ね」
「ああ、テレビで見たことがあるわ」
「それと、お母さんにじゃなくて、『ママに言いなさい』って言葉が、やっぱり女だって気がする。男の人だったら、母親に言っとけ、とか、お母さんに言いな、とか言いそうじゃない」
「そうねえ」
「あとは、お宅の子どもたちがあなたのことを『ママ』って呼んでるってことを知っている人か、もしくは、自分の子どもにも自分のことをそう呼ばせている人じゃないかじら。とっさに出た言葉だとしたら、いつも使っている言葉が出るものでしょ」
「なるほど~」
絵里がうなずいている様子が伝わってきた。