聞き戻せない電話
即、離婚よ! |
麻季子は絵里の夫の顔を思い出してみた。まったくの善人タイプで完全に絵里の尻に敷かれているのだ。
「まあねぇ。そんな余裕もないと思うわ。それに、もし浮気なんてしたら慰謝料もらって即、離婚よ!」
「まあまあ。それに、年賀状のと同じ人だとしたら、送った中に愛人がいることになっちゃうわよ」
「あ、そうか。じゃあ、やっぱり私への嫌がらせなのかな。年賀状と続けてだし。もう~、なんで~って感じ」
頭を抱えた絵里が身をよじった。
「それにしても絵里さんとこ、子どもが電話に出るんだ」
絵里が落ち込まないように、麻季子は話題を変えた。
「うち? だって、もうちゃんと応対できるもの」
「でも、子どもを狙った悪質商法もあるっていうわよ。連絡簿の名前を読み上げさせて同級生の名前とか住所とか教えさせるんだって。うちの翔太には、電話に出さないようにしてるのよ」
「翔太クンだけのときに電話がかかってきたらどうするの?」
「留守電にセットしておくの。私が外からかけたときは、メッセージ越しに呼びかけるし。本当に用事があればかけた人はメッセージを残すでしょ」
「まあ、残さない人もいるけど、用があればかけなおすわよね」
子どもを狙った悪質商法も |
「だって電話なんて、かかってきたら出るしかないじゃない?」
「番号非通知の電話は受け付けないようにすべきよ。そしたら、こっちはかけてきた人の番号を把握できるでしょ? たしか月額420円とかだし。電話のトラブルは、電話の機能でほとんど撃退できるものよ」
「そうなの?」
「それと、留守番電話にはほとんど録音機能が付いているでしょ? 子どもが電話に出るなら、何時に誰からどんな電話がかかってきたか親は知りたいじゃない。子どもの記憶だけに頼るのは危険かもしれないでしょ。今日の電話も、もし雅斗クンが録音ボタンを押してたら、聞き直せて誰からの電話か分かったかもしれないし」
「あ~ん、そんなこと考えたこともなかった」
「ボタン押すだけなんだから。せっかくの録音機能よ」
「そうねぇ。そしたら、後で聞き直せて私も安心だし」
「それと、横山ですって、家の電話に名乗って出ないほうがいいと思うんだけど。だから、雅斗クンも真似して名乗って出たんでしょ」
「そういえば、前にも麻季子さんにそう言われたことがあったわね。どうも実家にいる時からクセになってるみたいで。やめたほうがいいわね」
不審な電話があったばかりのせいか、絵里は真剣な顔でうなずいた。