防犯/防犯小説

ミセスの危機管理ナビ~聞き戻せない電話

【連載第2回】絵里の自宅にかかった電話の内容は? 聞き戻すことのできない電話が事態をより複雑にする。不審な年賀状と電話のナゾが深まる中、絵里との会話で麻季子が感じる「何か」があった…。

佐伯 幸子

執筆者:佐伯 幸子

防犯ガイド

連載第1回「ミセスの危機管理ナビ~切り裂かれた年賀状」を先にご覧ください。【全4回】

《前回までのあらすじ》麻季子の主婦仲間・絵里に呼ばれて家をたずねると、子どもたちの写真の載った切り裂かれた年賀状を見せられた。その二日後に、絵里から急いで来て欲しいと電話が来た。

子どもが受けた電話

子どもが電話を
子どもが電話を
玄関で麻季子を迎えた絵里は、長男の雅斗の肩を抱きしめるようにしながら言った。
「この子が、雅斗が、ヘンな電話を受けたって言うの」
「ヘンな電話って」
「マー君、もう一回言って。どんな電話だったか。あ、とにかく上がって、上がって」
リビングルームに通されると、ソファに座るか座らないかのうちに、絵里がまた言った。

「それがねぇ、私がキッチンにいたもんだから、この子に電話を取ってもらったのよ」
「絵里さんとこは、子どもに電話を取らせるの?」
「だって、もうこの子は2年生だもの。私が出らんないときは出るわよ」
「そう…」
言いたいことはあったが、それは後回しにすることにして、雅斗に話しかけた。

「雅斗クン、電話を取ったんだ。相手は何て言ってた?」
絵里をチラっと見上げて母親がうなずくのを見て、雅斗が話し出した。
「あのね、電話が鳴ったときにちょうどすぐそばにいたの。そいで、取って、はいもしもし、横山です、って言ったの。そしたらヘンな声で、子どもに気をつけるようにママに言いなさいって言った、みたいだった」
麻季子は絵里と顔を見合わせた。絵里は小さくうなずいて唇を引き締めていた。

「そいで、なんかねぇ、モゴモゴしてヘンな声だった。男の人か女の人かちょっと分かんない。女の人かもしんないけど」
「分かんないんだ」
「うん。そいで、ママを呼んできたら、もう切れてたの」
「ということなのよ。あ、マー君、もういいかも。ありがと。ママ、翔太くんのママとちょっと話があるからね」

雅斗が子ども部屋に入ったのを見届けてから、絵里が麻季子に向き直った。
「ねえ、どう思う? おかしいでしょう? 子どもに気をつけるように言えって、これって脅迫じゃない?」
「うーん、まあ、月夜の晩だけじゃないぞ、みたいな意味にも取れるわよねぇ。でも、だからって明白な脅しともいえないと思うな。気をつけて、なんて日常的に言う言葉だし」
 
まさか愛人?
まさか愛人?
「やっぱり、警察に言ったほうがいいかなあ。年賀状のこともあるし。でも、同じ人かしら?」
「まあ、そう考えるのが妥当でしょうね。続けてこんなことがあって、別々の人だとしたら、こんなことをする人が二人もいるってことでしょ? それこそ怖いし。でも、警察に言うほどのことじゃないと思うな」
「あー、もういったい誰なのかしら? 男なのか女なのか。あっ、まさか、うちの人の愛人…とか?」

  • →聞き戻せない電話……p.2
  • →→気になること……p.3
  • →→→夫婦の会話/あなたの一票/関連防犯ガイド記事……p.4
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