防犯/子どもを犯罪から守る

「あの先生嫌い」と子どもが言ったら?塾での危険(2ページ目)

「まさか学習塾で」とても信じられないような事件が発生しました。しかし、塾であっても危険はあるのです。そして、その危険に気づいてあげられるかどうか、は親にかかっています。

佐伯 幸子

執筆者:佐伯 幸子

防犯ガイド

子どもの気持ちを理解せよ

子どもとしっかり対話を
子どもとしっかり対話
(Illustration by Yukiko Saeki)
さらにその人のキャラクターによっても違います。明るく、教え方がうまく、楽しい授業をしてくれる先生なら、親しみを感じて、楽しく学習することもできるでしょう。しかし、たとえいい学校の優秀な成績の学生であったとしても、教わる側から「いい先生」と感じられなければ、授業は楽しくなく、勉強にやる気も出ないでしょう。

月謝を払って通わせるのに、子どもが苦痛を感じるようであってはまったく意味がありません。そこで、親と塾側の姿勢が大切になります。単に「勉強するのがイヤ」というのでは、「しっかり勉強しなさい」と親も言えるでしょうが、「何がイヤなのか」を把握しないことには、解決策も出てきません。

子どもは子どもなりに色々と気を使うものです。「言ったらよくないのでは」「言うとしかられるかも」など、自分が責められることには敏感です。そこで、親などの保護者は子どもの気持ちを聞きだすという役目があります。子どもは表現することが大人ほど上手ではありませんから、言葉の裏にある本当の気持ちを推察して、子どもの本心を探る必要があります。

塾としては月謝を取る以上、経営や評判を気にするだけでなく、子どもたちを預かるという重要な任務に対して、真剣に対応する義務があります。ルーティンワークに流されて、子どもたちの気持ちを推し量るという最も大切な点を忘れてはいけないのです。

塾であっても安全ではない

そうした理念は、分かってはいても、毎日の業務に追われてついなおざりにされがちなのではないでしょうか。犯罪はいつでも、予測しないときと場所で発生しています。塾でなら何も起きないとはいえないのです。

拙著で述べているのは、やたらと一人の生徒にこだわる先生が、ある日、その生徒を居残りにさせて、二人きりの教室で、悪質な性被害を負わせたという事例です。「おうちの人には言ってはいけない」と脅迫まがいにきつく言われ、被害にショックを受けている上に、さらに打ちのめされます。

その子は、「もう塾には行きたくない」と親に訴えて、何かあったと確信した母親が聞きだして、ようやく何が起きたか分かったのでした。その後の対応については親御さんによって違うでしょう。事を荒立てたくないとするか、裁判を起こすかなどです。

「あの先生嫌い」と子どもが言ったら?/親の義務/塾のあるべき姿勢 p.3
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