名刺を渡す
「あ、どうも。こんばんわ。どうぞ入って」(お、なんというか、今風な…)
「すごく素敵なホテルですねぇ」
「気に入った?」(電話とまた雰囲気が違うなぁ)
「ええ。うわー、窓からの景色がいい!」
そう言いながら、ミサキは窓辺に近寄ってたたずんだ。K介は彼女の後ろ姿をじっくりと観察した。(茶髪というより、金髪に近いな。電話で話した感じより、かなり遊んでいるような。元ヤンって感じだなぁ。もっと真面目なタイプだと思っていたけど。でも、スタイルは悪くない。まぁ、それほど悪くはないってとこかな)
「タケダさんって、どちらの会社にお勤めでしたっけ?」
ミサキが振り返りながら、突然、そう言った。
「えっ? ああ、言わなかったっけ。Nという会社だけど」(身元を気にしてるってか。心配ないよ)
「あ、あの○○関係の?」
「そう」(ちゃんと知ってるじゃないか。ま、知らないはずはないしな)
「へぇ。すごいですね。私でも会社名知ってます。やっぱりエリートなんですね。部署はどちらですか?」
「今は、企画部門にいるんだ。以前は別の営業所にいたけど、半年前から本社勤務でね」(つまりアップグレードしたってこと)
「すご~い!」
「名刺を見せようか」(見ないと信じないだろ)
「え、ホント?」
「かまわないよ。ほら」(フッフッフ。すごいだろー)
「へぇ~、すごい。やっぱり一流会社の人って感じですね。ありがとー」
そう言いながら、ミサキは名刺を自分の財布に入れた。K介は、ふと不安を覚えた。見せるだけのつもりだったが、財布に入れられてしまった。一度差し出した名刺を取り返すことも出来ない。(こんな出会いで、遊びなのに、本名や勤務先を教えることは大丈夫だろうか?)だが、(遊びなのはお互い様だ。彼女のほうが女なんだから、他人に知られたら困るだろう。会社の名刺で自宅が知られるわけじゃないしな。会社の連中だって、キャバクラで渡したりしているし)と思い、名刺を取り返すことは考えないことにした。
「タケダさんは、シャワーを浴びたんですね?」
「え? ああ。僕は済ませたけど」(おっと、いきなりそうくるか)
→乾杯、そして…
→→女の外出