逮捕!そして、再逮捕!
「もちろんですよ。そうですね。今夜はもう遅いですから。お送りしますよ」「結構ですよ。自分でタクシーで帰ります」
「そうですか。いや、今夜はどうもお疲れさまでした。でもね、先生」
「え?」
「またすぐお会いすると思いますよ」
そういうと、刑事はいたずらっぽい目で男に微笑みかけた。
(店の防犯カメラか。全然気がつかなかった。くそう。しかし、デジカメときたな。メモリは全部削除してある。デジカメくらい今どき誰だって持っている。パソコンだってそうだ。見たって何もありはしない。ヤバイものは何も残っていない。家宅捜索まではしないだろう。したところで何もない。デジカメを持ってこいと言われたら持っていけばいいさ。ビデオのことは言ってないし。証拠はないのだから、大丈夫だ)
しかし、やはり男の読みは甘かった。任意事情聴取の際の心証がきわめてよくなかったのだ。その上、本人がどう言おうと、状況は限りなくクロに近い。そして、刑事の言葉通り、男はまた彼と会うことになった。翌朝一番に「逮捕状」が発付されたのである。県迷惑防止条例違反(盗撮)容疑であった。
男は逮捕され、家宅捜索も行われた。デジタルカメラ、パソコン、ビデオカメラ、雑誌類などすべてが押収された。それでも男はまだ大丈夫だと思いこんでいた。取り調べでは全力で否認し続けていた。そして3週間近くたって、男は初めて絶望的になった。犯罪捜査班の手によって、削除したはずの画像がすべて復元されたことが知らされたのだ。
さらに、男の机の引き出しの下に隠したビデオテープも見つかっていた。パソコンの削除したファイルもすべて復元され、画像の他に少女とのメールのやりとりの記録も見つかった。写真とビデオの大量の画像を調べていくうちに、盗撮画像の他に少女のものが多数あることが明らかになった。捜査班は色めきだち、ごく最近のものと思われる同一人物の少女が問題になった。県青少年保護育成条例違反=淫行(いんこう)=の疑いもあることが判明し、男は再逮捕されたのである。
その少女とは、“サヤカ”であった…。
最終回「出会い系サイト~欲望の終末」に続く
【連載第1回】出会い系サイト~嘘つきなメール
【連載第2回】出会い系サイト~仕掛けるメール
【連載第3回】出会い系サイト~悪趣味なメール
【連載第4回】出会い系サイト~悪癖の発覚
【連載第5回】出会い系サイト~破滅の連鎖
【連載第6回】出会い系サイト~欲望の終末