男に会う!
約束の日、駅前のロータリーの近くで待っていると、携帯電話が鳴った。マエカワさんからだった。着ている洋服の色と形を伝えて、ロータリーのはずれに歩いていくと白い車がスゥーッと近づいた。助手席側のドアが中から開いた。「サヤカさんだね? どうぞ乗って下さい」
「はい。スミマセン。あ、初めまして」
乗り込むと車はスムーズに走り出した。
「初めましてだね。サヤカさん。思っていた以上にかわいいね。ところで、私のことはサトシ君から、どう聞いているのかな」
「あ、いえ、マエカワさんという名前と、何か立派な仕事をなさっているということだけ」
「いやぁ、立派なということもないけどね。従業員が数百人いるという会社の副社長なだけだよ」
「えー、スゴイですねー」
「すごくないさ。いずれは社長にならないとね。今はまだ“副”の字が付くんだから。さて、それでね、今話したように、従業員がたくさんいるんだ。ということは、いつどこで誰に見られるかわからない。だから、人目のある所では車からは降りないようにしたいんだけど、了解してくれるかい?」
「あ、はい」
「よかった。理解してくれて。やっぱりいい子だね。サトシ君の言っていたとおりだ。彼はキミのことをとても誉めていたよ。とてもやさしくていい子だって。実際に、やさしいしとってもかわいいし。これはサトシ君は悔しがるかもしれないな、ハハ。それで、気に入るかどうかわからないけれど、サヤカちゃんにお土産があるんだ。プレゼントだよ。後ろの座席にある袋を取ってごらん」
後ろを見ると、ちょっとした紙の手提げ袋があった。手にして中を開けると、若い女性に人気のあるトート型のかわいらしいバッグが入っていた。
「うわぁー、カワイイ!」
「サヤカちゃんに似合うと思って買ったんだよ。気に入ってくれてよかった」
「うれしー。ありがとうございます~。超カワイイ~~」
楽しい気分になって、ドライブする車内での会話がはずんだ。マエカワさんは話が上手で、色々とおもしろい話もしてくれた。笑ったり、感心したりしながらサヤカはすっかりマエカワさんのペースにはまっていた。気がつくと車は、街道から少し入った通りのモーテルに滑り込んでいた。
そこは駐車場から直接、部屋に行けるタイプだった。部屋に入ると、マエカワさんは冷蔵庫から飲み物を出し、手慣れた様子でスイッチを操作してムードのある音楽をかけ、照明をおだやかに調整した。
ソファに二人で並んで座った。マエカワさんが銀縁の眼鏡をテーブルに置き、自然にソフトにサヤカの肩に腕を回してきた。サヤカは微笑みながらじっとしていた。そして…
→奇妙な三角関係