少女の名前を記して
自宅に帰って、書き写してきたメモを見つめる。15歳と17歳の娘が二人。名前はK美とM美。間違いない。母親は41歳となっているが、自分の娘といくつも変わらない。(まったく、自分の娘にどういう教育をしているんだこの親は。娘が援助交際をしているってことを知らないのか?)自分の非は認めないどころか、少女の親まで責める。(だいたい、あんな若さで男を手玉に取ろうという根性が曲がっている。けしからん。さて、名前も住所も家族もわかった。これからどうするか…。まぁ、あの子がまた同じように会ってくれたら文句は言わんさ。金も払ってやろう。ほかの男なんかより、私のほうがよっぽど安全じゃないか。会えればいいんだ)
まずは、メールを送ることにした。
「N川K美さんへ。もう一度会うことを希望します。返事を待っています」
返事はこなかった。少女がどれほど衝撃を受けているかなど考えもしない。(これでも返事を寄越さないのか。なんて生意気なんだ! 私がこれほど低姿勢に出ているのに)何度かメールを送信したが、やはり返事はなかった。
だいたいどう返事をしろというのでしょうか?
かわいさ余って…
こうなると、かわいさ余って憎さ百倍である。(私の気持ちをわかろうとしない、なんて悪質な女だ! とても十代とは思えない。許せん。よし、こうなったら親を責めてやる。娘がろくでもないということを知らしめてやる。だいたい未成年者が事故を起こしたら親が賠償するじゃないか。子どもの不始末は親に責任があるんだ。この男こそ、とても分別ある年代の人とは思えません。それに相手は未成年だってよくわかっているじゃないですか!
それでも親が娘の悪さに気づいて、私と会うようにちゃんと話してくれるのなら、許してやってもいい。金で身を売るような娘の親だ。こちらは金を払うと言っているのだから、言うとおりにしろと娘に伝えるかもしれん。ヘタすると家計のために親が娘に売春させているということだってありえるぞ。あの親にしてこの娘ありってな。こっちは名前も住所もわかっているんだ。私にこんな思いをさせた罪を償わせよう。罰を受けるべきだ)
少女への執着が男の正常な判断力を失わせていた。無茶苦茶な論理で、すでに常軌を逸した思考になっているが、自分の異常さには気がつかない。自分の気持ちを抑えることができない。自分の行動の結果がどうなるかなど、考える余裕も想像力もない。
仕事も家庭も表面的には何一つ変わらない日々の中で、男の執念だけが嵐を呼ぶ暗雲のようにどす黒くわき上がって、男の胸の内を埋め尽くしていった。
【連載第5回】名前を知られた少女の衝撃と絶望出会い系サイト~少女の後悔 に続く。
【連載第1回】出会い系サイト~少女の誤算
【連載第2回】出会い系サイト~男の手練
【連載第3回】出会い系サイト~少女の拒絶
【連載第4回】出会い系サイト~男の執念
【連載第5回】出会い系サイト~少女の後悔
【連載第6回】出会い系サイト~男の代償
関連ガイド記事
◆住所氏名等の個人情報は簡単に教えてはいけません「住所を教えたのは誰?」◆あなたは大丈夫? 簡単にだまされないで!「電話一本、詐欺のモト」
関連サイト
女性のためのセキュリティ講座「個人情報管理術」次ページで「ストーカー/心理と対策プチ講座Vol.3」もあわせてご覧下さい♪