防犯/防犯小説

【連載第3回】拒絶は、男の気持ちに火をつけた 出会い系サイト~少女の拒絶

[3/6]お金が必要だった少女の理由とは? 事実を忘れようとする少女と舞い上がる男。倒錯的な感情に支配される男のあがき。

佐伯 幸子

執筆者:佐伯 幸子

防犯ガイド

※この連載記事は、実際に起きた事件をベースに「出会い系サイト」で起こりがちなトラブルのケースとして構成してあります。[全6回]

【連載第1回】少女にとって恐ろしい日々の始まり「出会い系サイト~少女の誤算」
【連載第2回】大人のテクニックにはかなわない「出会い系サイト~男の手練」
 を先にご覧下さい。

お金が必要だった理由

コンビニで自分と妹の好きなお菓子をたくさんカゴに入れて少女はレジに向かった。バッグの中の男にもらった3万円と封筒に入った携帯電話料金の請求書を取り出し、カゴと一緒にレジの店員に差し出した。2万8千円程度の料金を支払う。お金が必要な理由は携帯電話の利用料金だったのである。

「もう携帯電話、やめなさい」と親から言われてもやめられない。つい、先月は色々と話し込んだり、ネットにはまったりでかさんでしまった。高額な電話代が欲しいと言えず、支払えないままに支払期日が過ぎてしまっていた。

友人に頼れるわけでもなく、にっちもさっちもいかなくなったのだ。そんなときに思いついた「援助交際」だった。一度だけ、と思い切ってやってしまった。過去に彼氏がいたことがあるので、行為自体に恐怖感はなかった。が、後悔というほどではないが、いい後味ではなかった。

(もう会う気はないし、携帯電話もこれからは電話代に気をつけよう。やっぱ、あまり気分のいいものじゃないもの。援助交際したなんて誰にも言えないし、知られても困るし) 少女は自分では一度きりで終わったつもりだった。(名前も住所も言ってないのだから、自分のことがバレるはずはないよね)と思いこんでいた。

住所や名前を言ってないとしても、いろんな個人情報を話しちゃったでしょう? 考えが甘すぎるのでは?


コンビニのレジで万札を3枚とも使った時点で、すべてがチャラ、きれいさっぱり終わった感じがしたのだ。少女の中では、その日の出来事はすでに過去になっていた。自分が忘れてしまえば事実は消える、なかったことになると信じていたのだった。



浮かれる男

しかし、男のほうは違っていた。少女と別れてから、少女のことが忘れられない。自分の60歳になる妻とはまるで違う少女の肢体。自分の娘もすでに小学生の子どもがいるが、娘とも孫とも違う、許されざる行為を受け入れてくれた少女。それもたったの3万円で! 夢のようじゃないか! 3万円で自由になる少女! しかも風俗などのプロの女性でもない。こんなに素晴らしいことがかつて私の人生にあっただろうか!?

現役高校生で来年受験だというから月に2度でいい。たった6万円だ!ホテル代やタクシー代を考えてもどうってことはない。月に7~8万円くらい、私にだってどうとでもなる。愛人を持ったこともないし、酒やギャンブルで破滅するようなこともなかった。妻子や孫にもよく尽くしている。世間並みの十分真面目な男だ。それが携帯電話の「出会い系サイト」で、こんな夢のようなことが起きるとは。


未成年者を買春する、というだけで十分不真面目でしょう。

すでに舞い上がってしまった男だった。

(すぐにメールをするのもよくないな、若い男とは違うんだから。大人の余裕だ)
数日してから、少女にメールを打った。

「先日は楽しかったです。またお会いしたいですね。今度の土曜日はいかがですか?」

さりげない文章で送信ボタンを押すと、もう土曜日のことが楽しくてしかたがない。
(何を着ていこう。めがねはもう少し色の濃いほうがいいかな)

かつて感じたことのないウキウキ感でいっぱいだった。ところが、メールの返事はつれないものだった。

「もう二度と会うつもりはありません。メールもしないでください。さようなら」



最終ページで「ストーカー/心理と対策プチ講座Vol.2」もあわせてご覧下さい♪

  • 1
  • 2
  • 3
  • 次のページへ

あわせて読みたい

あなたにオススメ

    表示について

    カテゴリー一覧

    All Aboutサービス・メディア

    All About公式SNS
    日々の生活や仕事を楽しむための情報を毎日お届けします。
    公式SNS一覧
    © All About, Inc. All rights reserved. 掲載の記事・写真・イラストなど、すべてのコンテンツの無断複写・転載・公衆送信等を禁じます