少年はアングルシー島に生まれ、彼が13歳の時にランフェアプゥルに引越しました。その年の暮れに父親が喘息の発作で亡くなっています。学校時代に彼は週刊新聞を配達しており、老女の家にも届けていました。彼女はしばしば彼に玄関を閉めるように言っていました。彼は、16歳でデザインと美術の実業専修学校に行き始めました。
法廷で、少年はただ「ちょっとした好奇心だった」と、それ以上のものではない、吸血鬼にとりつかれてはいないと否定しました。しかしながら、彼は「ヴァンパイアの権利運動」や「ヴァンパイアと献血者」といったサイトに訪れていることを警察に調べられており、黒ミサの案内や人肉の食し方について書かれた雑誌を持っていたこともわかっています。
少年が逮捕されたことは、住民たちにショックを与えました。北ウェールズ警察署での聴取の最初の3日間は少年は何の感情も見せなかったと言っています。刑事が何か欲しいものはないか、とたずねると「ハンバーガーとフライドポテトが欲しい」と要望しました。
彼の母親(看護師)は3週間にわたる公判に訪れ、折に触れ傍聴席から手を振って合図をしていました。判決が言い渡されたとき、彼女は悲鳴をあげて泣き、少年が連れて行かれるとき、息子に向かって「I love you, son!」と叫びました。
吸血鬼の伝説に魅せられ、永遠の命を信じた少年のとった行動は決して許されざるものです。しかし、多感な十代の時期は、さまざまな情報の中から衝撃を受ける題材にはまってしまうことはありがちなことでしょう。若さゆえのエネルギーをどこに、何に注ぐのか、ということは人それぞれで、誰にもそれを妨げることはできないものです。
日本でも、少年による猟奇的な事件が起きた後、その事件を模倣する事件が起きることがあります。感受性に刺激の強い情報が衝撃を与え、それにとりつかれた思考が増大して、制御するだけの自制心がまだ身についていなければ、ときに予想もつかない事態を招いてしまうのです。
たとえ「誰かを殺したい」と思ったとしても、大多数の人は実行などしないものでしょう。しかし現実にはそれを実行してしまう人がいて、日々、各地で悲劇が発生しています。思っているだけ、と実行してしまうこととの差はあまりにも大きく、その結果は、裁判官が少年に言ったように、「他人の命を奪うという残虐な結末と、自らの刑」しかないのです。
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