平成13年5月30日午前0時40分頃、東京都葛飾区新小岩2丁目の一方通行の路上で、逆向きに停まっていた乗用車に乗り込もうとしていた男を警官が職務質問しようとしました。
男は長さ約40~50センチのバールを服の下に隠し持っており、取り上げたところ突然逃走して、約30メートル離れた近くの駐車場でもみ合いになりました。その際、男は追いついた警部補の腰からけん銃を奪い、警部補の頭にけん銃を突きつけ、それを警部補が振り払った際に1発、取り押さえた際に1発の計2発を発射しましたが、すぐに組み伏せて現行犯逮捕に至りました。
その後の調べで、男は42歳の無職。直前の29日夜「覚せい剤を使った」と供述していることから、覚せい剤反応があるかどうか検査しており、入手先などについて追及しています。
新小岩2丁目といえば、JR総武本線新小岩駅からほど近い地域です。深夜なので人通りは少なかったでしょうが、まだ通行している人もいる時間です。一般市民や警官らにケガがなかったことは幸いでした。
警部補は警視庁地域指導課の「職務質問指導班」に所属しており、職務質問の指導を行うため各警察署に派遣されていました。この日は葛飾区本田署の巡査部長を指導しながら、パトロールに同行中の出来事だったのです。さすがプロの仕事と言えます。
多くの人の中から職務質問をする対象を選ぶのは、どのような基準があるのでしょうか?これはやはり、彼らの職業的勘によるものと言えますが、「身に覚えがある」「法律違反をしている」つまり、薬物取締法や銃刀法などに違反している場合=薬物や刃物、けん銃などを所持していれば、おのずと動作に表れるものということです。
いわゆる「挙動不審」は、警察官の姿を見て逃げようとする、などは顕著なものです。「捕まったらヤバイ」ことをしていれば、自然と警察官を避けようとするものだからです。彼らはそれを決して見逃しません。また「普通でない」「当たり前でない」「どこか違う」といった状況=車の様子、人の動作(キョロキョロしたり、目線が不自然、何かを隠し持っていそう)などといった点を厳しくチェックするわけです。
午前0時を回った深夜、一方通行の道路で逆向きに停車していたという点が、まず目を引いたのではないでしょうか。そして、40~50センチもあるバールを服の下に隠し持っていたというのは、どう考えても様子はおかしいはずです。職務質問をしようとしたところ逃走したというのも、明らかに「身に覚えがある」もしくは「捕まったらヤバイ」ということでしょう。窃盗を目的として付近を物色していたのではないか、とのことです。
「覚せい剤を使った」ことが判明すれば、当然、「麻薬及び向精神薬取締法」違反で逮捕されます。
なおかつ、警部補のけん銃を奪って発砲しているので「殺人未遂」、そして「公務執行妨害」さらに「銃刀法」違反などの罪に問われます。