犯罪被害者給付金
平成12年(2000年)の1年間に支給が決まった犯罪被害者給付金は171人に対して平均407万円でした。給付申請者の総数は447人で、そのうち支給が決まった人数を被害者ベースでみると171人です。(これはたとえば一家の父親が被害で亡くなった場合、妻と子供が申請するといったように、被害者一人あたりに対して申請者の数は複数の場合があるということです)申請すれば支給されるというものでもなく、都道府県の公安委員会の裁定により決定されるのです。「犯罪被害者等給付金支給法」は1981年に施行されました。その趣旨は「人の生命または身体を害する行為により、不慮の死を遂げた者の遺族または重障害を受けた者に対し、国が犯罪被害者等給付金を支給する」というものです。
犯罪で亡くなった方の遺族や、身体に重大な障害を負わされた被害者に対して、社会の連帯と共に助け合うという精神に基づいて、その精神的および経済的打撃を緩和するために国が支給する給付金のことです。裁定は都道府県の公安委員会によるものです。
通り魔や殺人など凶悪で被害も重大な事件では、遺族や重傷を負わされた被害者の精神的苦痛は計り知れないものがあります。心の傷は簡単には癒されないものだからです。また一家の主であれば残された家族の生活にすぐ支障が出るでしょう。経済は日々のもので待ってはくれません。支出を止めることは不可能ですし、収入が途絶えることはその日からの現実なのです。
年若い被害者であれば明るいはずの将来がかき消されてしまうのです。お金には代えられないけれども、せめてお金で当面の経済を支えて、少しでも精神的打撃を癒せればというこの制度ができてからまだ20年です。それ以前はこのような法律はなく、被害者や遺族はまったくの「泣き寝入り」だったのです。
現行制度でも支給対象や額がまだ不十分だとの指摘がありました。そこで、警察庁は支給対象を大幅に拡大して、給付金額も最高で約576万円引き上げる制度改正をすでに決めています。
被害者にとって経済的支援のほかに、必要なことはたくさんあります。生活上の支援、医療、公判に関することなどさまざまな方面の援助がなくてはなりません。当然、警察だけではそのすべてに対応することはできませんから、トータルな被害者支援のためには、司法、行政、医療、報道機関等の機関・団体等が相互に連携することが欠かせないのです。
そこで1999年2月に、警察、検察庁、弁護士会、医師会、臨床心理士会、知事部局や市の担当部局、県や市の相談機関等による「被害者支援連絡協議会」が全都道府県で設立されました。被害者のニーズに応じて適切な機関の紹介を相互に行うなどの活動を行っています。
また民間の被害者援助団体も、被害者の精神的ダメージの回復のためのカウンセリングなどを行っています。さらに被害者支援活動の協力態勢が、全国規模で広がっていくことがこれから期待されます。
犯罪の増加はつまり被害者の増加です。犯罪が凶悪化、多発化している昨今、いつ自分や家族が被害者になるかわかりません。日頃から慎重な行動をとって危険な状況を避けて、人生や将来が一変してしまうような犯罪被害を受けないように皆さん気をつけましょう。
■関連ガイド記事
犯罪被害者給付制度の基礎知識