航空券/航空会社・エアライントピックス

コンチネンタル航空の家族主義経営(上)(2ページ目)

かつて“どん底”の時代を経験したアメリカ系メガキャリア──コンチネンタル航空。その後の復活劇は、見事としか言いようがありません。復活の原動力となったユニークな家族主義経営について取材しました。

執筆者:秋本 俊二

必要なサービスについては
簡単にカットしない


“9.11”の同時テロ以降、業界ではコスト削減のために乗客へのサービス見直しを進めるエアラインが相次ぎました。短距離路線の機内食サービスをやめてしまったり、ブランケットや枕の提供を廃止したり、ラウンジをクローズしたり……。しかしコンチネンタル航空は、そういう厳しい時代だからこそ、あえて乗客の声に耳をかたむけました。利用する人たちは、自分たちの会社に何を求めているのか? そうして必要なサービスについては簡単にカットしないという姿勢を貫きました。

「お客さまへのサービスをカットしなくとも、エアラインとして無駄を省くために努力できることはいろいろあります」と、坂本さんは言います。「また社員のペイを安易にカットする前にも、取り組むべき課題は少なくありません。経営陣のそういう姿勢が、私たち社員にも当時から見えていましたね」

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必要なサービスについてはカットしないという姿勢を貫き通した

1カ所での大きなコストダウンは無理でも、いろいろな部分に目を向けて少しずつ無駄を排除し、その積み重ねで目標値までコスト削減を進めていく。その結果、乗客へのサービスについては、縮小するどころかむしろ従来以上に資金をつぎ込んでいいサービスを提供できるようになった──そう坂本さんは言うのです。

良い面も悪い面も
すべてをガラス張りに


社員のペイには安易に手をつけないという会社のその姿勢は、働く人たちのモラルアップに確実につながったようです。そうしてようやく“ブレーク・イーブン”──つまり赤字(支出)と黒字(収入)のバランスがとれてきたのが2004年。社内では誰もが「自分たちはここまで会社の経営を建て直してきた」と自信を深めていました。原油価格の異常なほどの高騰が業界を襲ったのは、そんな矢先のことでした。1バレル=23~24ドルだった原油の価格が、1バレル=70~80ドルにまで跳ね上がったのです。

予想だにしなかったこの原油高に対応するために、会社もついに社員のペイに手をつけざるを得なくなりました。それについて、坂本さんは次のように話します。

「お客さまへのサービスをカットしない、社員のペイにも手をつけない。私たちはそれ以外のあらゆる細かい部分を見直して無駄を洗い出し、みんなで意見を出し合って、コスト削減を進めてきました。これ以上はもうどこもカットできない、そういう状況まできていたのだと思います」

もちろん、末端の社員たちだけが給料を減らされたわけではない。会長や社長、役員クラスなど、上にいくほどカットの幅は大きく、最も収入の少ない層では数%程度のカットでした。そして、それをせざるを得ない理由も全社員にていねいに説明されました。

「この会社は、良いことも悪いことも、すべてがガラス張りです。社員のペイをカットしないために、会社がこれまでどんな取り組みを進めてきたか。自分たちもそこでどんな努力をつづけてきたか。社員たちはみんな知っているわけです。だからこそ、会社の方策に対しては多くの社員が納得し、コンセンサスを得ることができたのでしょうね」


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