航空券/航空会社・エアライントピックス

コンチネンタル航空の家族主義経営(上)(3ページ目)

かつて“どん底”の時代を経験したアメリカ系メガキャリア──コンチネンタル航空。その後の復活劇は、見事としか言いようがありません。復活の原動力となったユニークな家族主義経営について取材しました。

執筆者:秋本 俊二

社員が一丸となれる体制づくりを
経営再建のベースに


コンチネンタル航空が経営再建のベースに置いたのは、“ワーキング・トゥゲザー”の合言葉のもとに全社員が一丸となって戦っていける──そんな体制づくりでした。

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日本人FAの岡留久美子さん
各職場では社員同士のあいだで、現在も毎日のように自主的な話し合いが行われています。カスタマーサービスの新しい試みとして、こんなことをやってみたら乗客にとても喜ばれた。日々の業務でこの点はとても無駄だと思うので、改善したらどうか……。そうして議論された結果や現場の要望は、すぐに会社のトップに伝わっていきます。

社内の「ホットライン」の存在について話してくれたのは、成田をベースにグアム線などに乗務する日本人FA(フライトアテンダント)の岡留久美子さんです。

「チャイルドミールの予約漏れがあったり、毛布が不足してもう少し増やしてほしいと感じたり、日々の乗務ではいろいろ気がつくことや困ることがあります。そういうときに私たちが利用するのがホットラインです。電話して、フライト番号とフライト日、それに自分の名前をきちんと名乗り、こういう事情があったので改善してほしいと声を残す。要望は確実にトップに伝わりますね。『あ、変えてくれたんだな』とすぐに目に見える形で対処してくれるケースも少なくありません」

岡留さんはそうした会社と社員の日頃のコミュニケーションを通じて、現場の一人ひとりを本当に大切にしてくれる会社だと実感するといいます。

グアムで“ピザの日”に遭遇し
会社の温かみを実感


コンチネンタル航空は現在、計4万4,000人の社員を擁していますが、その全社員に毎日最新のニュースが電子メールで届けられます。内容は、社内におけるその日の出来事など。CEOがアジアに出張していれば、そのことを社員全員がリアルタイムで知ることができる。会社がいまどういう状況に置かれ、何をめざしてどんな取り組みに着手しようとしているのか。旅客運航部の坂本さんの話にもあったように、良い面も悪い面も、いっさい隠し立てはしない。その悪い面を、どう自分たちで変えていくか。社員たちはそんなことを真面目に話し合い、実践しています。

「この会社には、まるで家族の中で働いているような温かみがありますね」

FAの岡留さんは、そうも感じているといいます。その一例として話してくれたのが、2006年夏のグアムでの出来事でした。

「グアムへのフライトを終え、現地のオフィスを訪ねたときのことです。中に入ると、テーブルに大きなピザとドリンクが用意されていて……え、なんだろうって思いました。私がキョトンとしていると、同僚に笑顔で『今日は“ピザの日”よ』と言われ、それでやっと思い出したんです」

“ピザの日”とは、社員全員に会社側から昼食用のピザが提供される恒例のイベントです。その日、本社があるヒューストンではCEOのラリー・ケルナー氏が自ら空港に出向き、そこで働く社員たち一人ひとりに飲物とピザを振る舞ったといいます。

「いつも一生懸命働いてくれてありがとう、と感謝の意を伝えるために始まったイベントだと聞いています。些細なことかもしれませんが、私たちにとっては、とても励みになりますね。ありがとうと言われて、嬉しくない人はいないですし、もっともっと頑張ろうという気持ちにもさせてくれます」

ピザというのも、実にアメリカ的でいい。それに話を聞いていて、まさに“家族主義経営”を実践するコンチネンタル航空らしいイベントだな、とも思いました。


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