
「名もない家事」が話題になったことがある。例えば食器を洗ったあとの排水口の掃除、あるいは風呂掃除をするとき、バスルームで使っている椅子も掃除をするのか、シャワーヘッドを洗うのか。そもそも洗濯をするとき、洗剤の残りをきちんと把握しているかどうか。食器洗い、料理、掃除と言ってしまうのは簡単だが、そこには無数の細かな段取りと計画が必要になってくる。家事の大変さはそこにある。
義母は家事を「やっているつもり」だけど
1年ほど前から夫の母と同居を始めたミノリさん(43歳)。2年前、義父が亡くなって義母が一人で寂しいと言いだしたのがきっかけだった。ミノリさんは同居するつもりはなかったが、夫の実家は都心にあって交通の便もよく、なおかつ一軒家で2世帯同居にも十分な広さがあった。
「夫は一人っ子なので、母親を一人にしておくのも心配のようで。まだ70歳になったばかりで元気ですが、かつて心臓の病気をしたこともあるとかで夫は不安だったようです。義母はおっとりしたいい人ですが、それでも同居となるとちょっと……というのが私の本音でした。それでも、夫に懇願されて腹をくくりました。ちょうど息子が小学校に入るタイミングだったので、昨年春から同居に踏み切ったんです」
ミノリさんは仕事が大変だろうから、家事は私に任せてと義母は言ってくれた。娘の保育園の送り迎えもするという。
「もちろん、そんなわけにはいかないので、娘の送迎は私か夫がやる、基本的に義母は自分の部屋とリビングの掃除、余裕があるときに夕飯の支度というようにアバウトに分担を決めました。洗濯については義母は自分の分は自分ですると言っていました」
遠慮せず無理せず、同居していくというところで話がついていたのだが、義母の家事は基本的に「土台を作ってくれる人がいるから」成立するやり方だった。
義母の行動で予定がめちゃくちゃに
「例えば義母は洗濯に使う洗剤の量をまったくチェックしない。だからふと気付くと、今日中に買わなければいけないような状態になっているんです。洗濯が面倒だからという理由で彼女はまとめてやっているみたいで、今日は洗濯の日と決めたら1日で4回も5回も洗濯機を回すんですよ。だから一気に洗剤が減る。たくさん使ったよと一声かけてくれるとありがたいんですが、それをしないので、あれ、こんなに減ってたっけということになる」
ミノリさんは1週間の夕飯のメインに関しては、だいたい決めてキッチンのボードに書いておく。食材に関してもチェックをしているが、義母がイレギュラーで料理を作るときがあり、そうなると献立がめちゃくちゃになることもある。
「夫は、せっかく母親がやってくれているんだから、あまり細かいことは言わないでと言うんですが、義母が急に食材を使うことで逆に余りがでたりロスがあったりするんですよね」
ミノリさんは顔をしかめた。
キッチンでのタイムロスが多い
「義母は何か一品作ろうとするとき、なぜか私の帰宅時間に合わせるように動き出すんですよ。もうちょっと早くやってくれれば、一品できているところに私が帰宅、私は私で予定していたものを作る、副菜は義母が作ってくれたからその日はやめるということができるんですが、私が帰宅すると義母は料理の真っ最中。待つしかないんです」
時にはのんびりとお菓子作りをしているときもあり、「今、このときにどうしてお菓子なの?」と叫んでしまったこともあるという。子どもたちはおなかをすかせているし、キッチンは自由に使えない。
「義母は悪気はないんですよ。『え、もうこんな時間なの?』と驚いていたから、思ったより時間がかかってしまったんでしょう。でも子どもたちの生活時間を大幅にずらしたりするのは明日にも響くし、なによりおなかをすかせている子に待ってなさいというのも残酷。だからその日は冷凍食品や作り置きをババッと温めて、残りご飯で食べさせました」
キッチンをもう1つ作る案を出したが
それを機に、ミノリさんは自分たちが生活している2階にキッチンを作れないかと夫に相談した。だが夫は「そうなるとおふくろ一人で食事をさせることになるわけ?」と乗り気ではない。
「基本的には今までと同じでいいけど、朝は2階にキッチンがあった方が便利だと思うし、お義母さんがああやって突然お菓子作りを始めたときにも子どもたちを待たせずにすむ。うまくやっていくにはその方がいいと思うと言ったんです。夫がそれとなく義母に言うと、『分かった。もうキッチンは使わないわ、私』って。いや、そういうことじゃないんですよと言ったけど、彼女は自分のしていることを否定されて拗ねてしまった」
結局、小さなキッチンを作る案は排除され、今も時々ミノリさんはてんてこまいになることがある。
「つくづく思いますよ、義母と暮らすのは本当に大変だって」
ささやかな家事、ささやかなすれ違い。そのストレスがたまっていくと、「そのうち爆発しそうな予感があります」とミノリさんはつぶやいた。







