
お気に入りのキャラクターのぬいぐるみを持ち歩き、チャンスがあれば風景などと共に写真を撮る人が少なくない。「ぬい活」「ぬい撮り」などと呼ばれる行為だが、中にはそれを不快に思う人もいる。
他人に迷惑をかけなければ問題ないでしょと開き直る当事者もいて、それももっともなのだが、迷惑というよりは「場を読む」ことも大事なのではないだろうか。
久々に女友達に会ったら
「結婚して遠方で暮らしていましたがうまくいかず、5年で離婚して東京近郊の地元に戻りました。幸い、すぐに就職できて心身ともに復活。そんなとき昔からの友人と会うことになったんです」
カホさん(38歳)はそう言う。友人のマリカさんに会うと、彼女はびっしりと小さなぬいぐるみを詰め込んだ透明バッグを肩に現れた。街でよく見かける「ぬい活」である。
「とりあえず喫茶店に落ち着いたんですが、彼女は私に『元気だった?』の一言もなく、『最近、この子にはまってるのよー』といきなりぬいぐるみを取り出しました。いや、いいんですけどね、好きなように生きればいいと思うし。だけど頼んだケーキがくると、なんと彼女、そのお皿にぬいぐるみをよりかからせるようにして写真を撮り始めたんです。いつもやっているからでしょう、ごく自然な動作だった。あげく、一緒に食べているような写真も一生懸命撮っていました。周りの視線も気にならないみたいでしたね」
所構わず撮影する友人に……
お皿にぬいぐるみを載せんばかりだったので、「さすがにそれはやめた方が」とカホさんが言うと、「どうして? 大丈夫よ。クリームをつけないようにするから」とぬいぐるみ目線。
「そうじゃなくて衛生的にどうかなと思うよと言うと、彼女、急にムッとしたようにやめました」
その後は互いの近況などを報告しあっていたのだが、店をあとにして外へ出ると、マリカさんは今度は人で混雑している橋の欄干にぬいぐるみを載せて撮影しはじめた。
「そのとき思ったんです。彼女は私に会いたいわけじゃなくて、ぬい活をしている自分を私に見せたいだけなのではないかと。一緒にいても心が通い合わない、ぬいぐるみをどうやって撮るかに心を奪われていて私のことなど眼中にない。そんな気がしました」
さみしいというより虚しかった。目の前にいる友人が見知らぬ他人に見えた。
年齢に関係なく
ぬい活にはまるのは10代から30代くらいの女性だというイメージがあるが、今や年代は問わない。
「私の友人は5つくらい並べて道端で写真を撮っていました。歩行者の多いところではないけど、歩道と車道の区別がない小さな道だから、なにもこんなところで撮らなくてもと思いましたね」
シオリさん(47歳)はそう言う。友人も同世代、一人息子が留学で手を離れてから、そういう行為が目立つようになったという。
「どういう趣味をもとうとその人の自由だから、そこにとやかく言うつもりはないんですが、彼女は時々ちょっと大きめのぬいぐるみを持ってくることがあるんです。一緒にランチをしたとき、そのぬいぐるみを自分の横に座らせて、いちいち食べ物をその子の口に運んでいる。いや、いいんですけどね……。本音を言うと一緒にいるのがちょっと恥ずかしかった」
食べさせながら、もう片方の手でスマホを操作して写真も撮っていた。こうなると、一緒にいても1つの話題に集中することはできない。
「友達と一緒にいることを重視していないなとは思いました。その昔、スマホがはやりだしたころに、一緒にいるのにスマホにばかり目をやっている夫を怒ったことがあるんです。そのときのことを思い出しました」
電車の中でも
友人がどういうきっかけでぬい活にはまったのかは分からない。ただ、「いい大人なんだから、どこにでもぬいぐるみを持ち歩いて、場の雰囲気も読まずに持ちだしては写真を撮るという行為はどうかなと思った」そうだ。
「もちろん個人の自由は守られなければいけないし、彼女が何をしようと自由ではある。ただ、一緒にいる人の気持ちや、店などでは衛生面など店側の事情、外では行き交う人たちの邪魔になっていないかなど、いろいろ考慮すべき点はあると思いますね。例えばそういうキャラクターが集まるお祭り的な場だったら、まったくかまわないと思うけれど」
シオリさんは混んだ電車の中で席に座った中年女性が、バッグからぬいぐるみを取り出して撮影しているのを見たこともあるという。もちろん他者の顔は入っていない位置関係だが、混んだ車内を眺めているぬいぐるみの様子を後ろから撮ったようだ。周囲もちょっと驚いたように彼女を見つめていたという。
もちろん誰にも迷惑をかけてはいない。ただ、どこかモヤモヤしたものが残るんですよねとシオリさんは苦笑した。







