
人の食べ方は案外、気になるもの。「クチャラー」こと、くちゃくちゃ音を立てて食べるのは論外として、それ以外にも気になってたまらないことは人によっていろいろだ。
久々に友人たちと食事をしたら
「学生時代の仲よし4人組で10年ぶりくらいにゆっくり会ったんですよ。みんなそれぞれ子どもができたり仕事が忙しかったりして、会えてもせいぜいお茶して別れることが多かったので」
ユリカさん(40歳)は、仲のよかった女友達との食事を楽しみにしていたという。だが実際に食事をしてみると、「あれ、みんなこんな感じだったっけ」と首をひねることが多々あった。
「一人がやたらとお皿やお茶碗から、食べ物を『かきこむ』んです。かちゃかちゃ音をさせながら。せっせと銘々皿にとりわけてくれるんですが、取り分けたあと、自分はぐわーっとかきこむ。それがあまりに気になって、途中で『そんなにせっかちに食べなくても大丈夫だよ』と言ったら、彼女、はっとしたように『あー、ごめん。いつも子どもたちに食べさせて自分はかきこむように食べる癖がついてるんだよね』と。彼女は4人の子持ちなんですよ。8歳を頭に、一番下はまだ1歳。しかも仕事もしている。そりゃ時間がなくて大変だよねと言うと、『立ったまま食べることも多くて』って。思わずみんな黙っちゃいました」
母として頑張っているのは分かっているが……
もう一人は逆にやたらと食べるのが遅い。しかも口に入れたまましゃべり続け、食べ物が飛んでいる。確かに食べるのは前から遅かったが、そのまましゃべるようなことはしていなかったような気がするとユリカさんは思っていた。するとそれに気づいたのか、彼女は「私、昔から食べるのが遅かったのよ」と話し始めた。
「だけど子どもたちが少し大きくなってから、とにかく言わなければいけないことが多過ぎて、すごくおしゃべりになっちゃったと言ったんです。おしゃべりなのはかまわないけど、食べ物を飛び散らかすのはどうかなと思いましたね。まあ、さすがにあまりそういうことを指摘はできませんけど」
二人とも母として必死に頑張っていることは分かっているから、それを非難はできない。ただ、ほんの少し「がっかりした」とユリカさんはつぶやいた。
夫の実家で目にした光景
夫の実家で会った親戚たちの食事の光景に思わず言葉を失ったというのはヒサコさん(37歳)だ。3年前に結婚、2年前に子どもが生まれ、今年の正月、初めて家族そろって夫の実家へ出向いた。
「近くにいる夫の親戚までみんな集まって、20人以上いましたね。食事が始まると、それはそれはすごかったです。義母と義姉と私はひたすら料理を運んで給仕する。本当はやりたくないけど『嫁』として、今回だけなんとか我慢してほしいと夫に言われていたので、それはやりました。でもびっくりしたのは夫の親戚たちが、私の名前を呼ばずに、『○○(夫の名前)の嫁ー』とお箸で皿を叩いて呼ぶこと。あまりに下品ですよね」
それは別に地域の問題ではなく、夫の実家だけでの習慣らしい。義母や義姉も皿をがちゃがちゃ音を立てて重ねたりするので、お皿は欠けているものが多かったという。
「次の日は親戚は帰って、義父母と義姉一家と私たちだけだったんですが、義父がチッチッと妙な音を立てながら食べるんですよ。舌打ちしているのかと思ったけど、そうではなく、舌で歯の間に挟まったものを取り除いているらしい。それがなんとも言えない嫌な音で……。ちょっと寒気がしました」
義母はやたらと食べ物を「すする」ので、その音も気になり、義姉の息子は犬食い、義姉は皿を箸で引き寄せる、義姉の夫はクチャラーと、それはそれはあちこちでいろいろな音がする食卓だったという。
食べ方は「自分で学んだ」という夫
「もう食べるのを放棄したいと思いました。私はもともと、他人が食べるときの物音が気になるタイプ。夫はおいしそうに、でも余計な音を立てずに食べる人なので安心していたんですが、家族はあんな感じだったんだと初めて知って驚きました」
夫にその話をしたら、「大人になってから、自分でいろいろ学んだんだよ。うちでは箸の正しい持ち方も教えてもらっていなかった」と言ったそうだ。義父の舌打ち風な食べ方は昔からで、かつてはもっと激しい音だったらしい。
「食べるときに音を立ててはいけないというのは社会人になってから知ったと夫は言っていました。義姉一家もまずいよねと言ったら、『そういうことはきょうだいでも言いづらいんだよね』って。まあ、一緒に住んでいるわけじゃないからいいけど、やはり今後はあまり訪れたくはないですね」
食事のマナーは最低限、人を不快にさせないためのものではないか、それを子どもたちに伝えたいとヒサコさんは言う。







