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「このままでは寂しい高齢者に……」仕事減の60代ライターが“11の現場”で見た、シニア雇用の現実

定年後の仕事や収入に不安を感じていませんか? 60代ライターの神舘和典氏が11の現場で働いた体験談をもとに、シニア雇用のリアルを解説。ドライバーやゴミ収集、ホテル清掃などの本音と、60代から選ぶべき「狙い目の仕事」を紹介します。(画像:PIXTA)

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60代からの仕事体験記――ゴミ収集、山小屋……身体を張って分かった「シニアの狙い目」(画像:PIXTA)
60代からの仕事体験記――ゴミ収集、山小屋……身体を張って分かった「シニアの狙い目」(画像:PIXTA)

年齢を重ねるとともに訪れる「この先の仕事や収入はどうなるのか」という不安。長年ライターとして活躍してきた神舘和典氏も例外ではありませんでした。

60代を迎え、仕事の減少に危機感を覚えた神舘氏は、自ら求人サイトを通じて多様な現場へ飛び込みました。著書『60歳からのハローワーク』(飛鳥新社)でその体当たり取材をつづった神舘氏に、ゴミ収集、リゾートホテル、農場など11の職種で実際に働いて分かった「シニア雇用のリアル」と、いま選ぶべき仕事のヒントを語っていただきました。

目次

60代で感じた仕事減少の危機感「このままでは寂しい高齢者になる」

――神舘さんは60代を迎えてから、11種類もの現場仕事に実際に飛び込んで働かれたそうですね。そもそも、なぜこのような体験取材を始めようと思ったのでしょうか。

もともとの僕の仕事はライターで、本を書いたり、雑誌で記事を書いたりしています。でも、年齢が増すとともに仕事が減ってきました。ずっと仕事を依頼してくれていた編集者も歳を取り定年していきます。世代交代です。若い編集者にとって、年配のライターは扱いにくいものです。

自分の人生、このままでは先細りになる。僕は寂しい高齢者になる恐怖に怯え、身体が元気なうちにあらゆる仕事にトライして自分に鞭を入れようと思いました。今の仕事を失っても、ほかにやれる仕事があるかもしれない、と。

一般求人サイトに応募して分かった「シニア雇用」の現実

――体験した業種・職種は多岐にわたっていますね。リゾートホテルのベッドメイク、山小屋へ食糧運搬、ラブホテルで大人のオモチャの消毒、清掃車でゴミ収集、グループホームで食事のケア、沖縄でマンゴーの収穫、ファストフード店の店員、宅配業の荷分け、建物の解体業……など。仕事はどうやって探したのでしょう。

知り合いからの紹介もありましたけれど、一番多かったのは、求人サイトを通してです。当時もう63歳になっていて、年齢を理由に断られると思っていました。

ところが、思いのほか、どこも採用してくれました。多くの職場で人手を求めていることが分かりました。働く意欲があれば、仕事内容や条件で選り好みしなければ、日本の社会では仕事はある。それがよく分かりました。ただし、楽な仕事はなかなかないとは思いますが。

――シルバー世代限定の求人もありますか。

シルバー世代限定の求人は、あまり意識していないからかもしれませんが、僕自身は見かけなかったですね。募集する側は、基本的には若い人を求めています。だから、現場に僕が現れると、がっかりされる雰囲気はありました。でも、僕はけっこう働き者なので、帰りにはよく「また来てください」と言ってもらっていましたよ。実際に今も誘いの連絡もいただいています。年齢よりも働き手として実質的に役に立つかどうかが重要なのでしょう。

実は、地域のシルバー人材センターにも登録しています。でも、まだ利用したことはありません。給与の条件がよくないからです。だからまだチャンスがあるうちに採用されるならば、シルバー限定でない求人に応募した方がいいと、僕は思います。

ただ、シルバー人材センターでは、カラオケ大会やボーリング大会などイベントをやっているんですよ。収入を得る目的でなく、友達をつくりたいならば、参加してはいかがでしょう。

――面接にコツはありますか。

コツというよりも、やる気があれば問題ないのではないでしょうか。求人を出している会社はそもそも人手が足りなくて働いてほしいのですから。実際、履歴書不要・面接ナシの求人はいくらでもあります。

人手不足のドライバー業界――60代からでも狙い目?

――すすめたい仕事はありますか?

路線バス会社やタクシー会社はおすすめしたいですね。深刻な人手不足で悩んでいる業界だからです。路線バスは、利用したいお客さんはたくさんいるのに、ドライバー不足で、全国的に減便しています。タクシー会社も同様にドライバーが足りなくて、クルマが余っています。実際に今、病院に通うお年寄りの多くが困っています。多くの人に応募してほしい。でも、見学会に参加したり、面接を受けたりしましたが、僕には難しかった。

――なぜでしょう?

まず、僕は運転が下手です。大型バスのコックピットに座らせてもらいましたが、あの鯨(クジラ)のようにデカいバスをあやつる自信が持てませんでした。バス会社のかたは、毎日運転するのでいやでもうまくなると励ましてくれましたが。

あと僕は頻尿で、おなかもちょっと緩いんですよ。だから、運転中にトイレに行きたくなるのが怖い。でも、そのあたりの心配のない人には、ドライバーはおすすめしたいです。社会貢献度も高いですし、収入面でも悪くないと思いました。第2種の免許を取得するお金をサポートしてくれる会社も多いから、今がチャンスではないでしょうか。60歳以上も、女性も働いています。

リゾートホテル・山小屋・ラブホテル……宿泊施設の裏側と働きやすさ

――著書『60歳からのハローワーク』を読むと、いくつかの宿泊施設で働いていますね。リゾートホテル、山小屋、ラブホテル……。

海や山のような自然のなかで働くことに興味があれば、リゾートホテルはおすすめです。僕自身は伊豆の海沿いにある会員制リゾートホテルで働きましたが、環境は抜群でした。主な仕事は、客室やパブリックスペースの清掃、アメニティのチェック、食事の補助などです。20代から80代まで、男性も女性も働いていました。週末や年末年始、ゴールデンウイーク、お盆は大変だと思いますが、早朝やチェックアウト時間後は余裕があり、サーフィンや釣りをやっている人もいて、真っ黒に日焼けしていました。

作業で意外ときつかったのはベッドメイクです。腰が痛くなりました。でも70代の男性スタッフによると、3カ月くらいで身体は慣れるそうです。本のなかでも書きましたが、ホテルのかたがたに仕事ぶりを気に入っていただき、勧誘してくれました。短期でも、長期でも、好きな働き方でいいとも言っていただいた。寮があり、住まいと朝夕の食事のサポートもありました。

栃木の山小屋はなかなか大変でした。クルマの行かれない宿に食糧を運び、上では客室やお風呂の掃除や、洗濯、食事の支度が主な仕事です。情けないことに、僕は思っていたよりも体力がなくて、山小屋にたどり着くまでにほぼ力尽きました。ふだんから登山を楽しんでいる人だったら、山に登れてお金ももらえて、一石二鳥だと思います。

僕が働いた山小屋は夜9時消灯でした。露天風呂は男女混浴ですが、照明がなく真っ暗なので全く問題ありません。顔も年齢も分からない女性と会話をしながら湯に浸かりました。あの夜、空を見上げたときに広がっていた満天の星は今も忘れられません。まるで宇宙にいるようでした。ただし、今はクマの出没に十分に気をつけなくてはいけません。

ラブホテルの仕事は、大阪と神戸でやりました。客室の掃除とセットアップが主です。リゾートホテルと異なり、客回転が速いので、終日掃除をしていたイメージです。でも、正直なところ、待機している時間が長いと飽きます。動いている方がいい。

ラブホテルも老若男女が働いていました。週に6日勤務の80代の男性もいたし、妊娠中の女性も働いていました。若い女性スタッフが多いことには驚きました。ラブホテルで働くメリットは、働き方がフレキシブルなところでしょう。昼でも夜でも、長時間でも短時間でも、さまざまなシフトを選べます。ダブルワークもやりやすい。

実は大人気の「ゴミ収集アシスタント」実際の体感と魅力

――ほかにおすすめの仕事はありましたか。

意外と頑張れたのが、清掃車の助手席に乗ってのゴミ収集です。2社で働きましたが、かなり厳しいと想像していたので、1カ月くらい前からジムでのトレーニングを強化して臨みました。でも、なんとかやれました。

ゴミの収集は清掃車の助手席に座っていられる時間が意外と長いので、疲労を回復しながら働けます。ゴミをピックアップするために1日に100回くらい清掃車を乗り降りしますが、縦の運動なので、腰への負担が少ないと感じました。仕事は朝7時台からで、午後早い時間に終わることが多くて、2時、3時には帰宅できたのもうれしかった。

実際、ゴミ収集の仕事は人気があります。求人サイトに募集が出ると、早い者勝ちで、すぐに定員いっぱいになります。

ただし、夏は厳しい。僕が働いたのは5~7月でしたが、幸運にも曇天が多かった。8月の青天の日には、熱中症のリスクがかなり高いと聞きました。それと、ゴミに混ざってネズミや害虫もいるそうです。

――後編に続く
「日本も捨てたもんじゃない!」差別覚悟でごみ収集車に乗り込んだ“63歳の見習い”が見た温かな人情

神舘和典 プロフィール
1962(昭和37)年東京都生まれ。雑誌および書籍編集者を経てライター。政治・経済からスポーツ、文学まで幅広いジャンルを取材し、経営者やアーティストを中心に数多くのインタビューを手がける。中でも音楽に強く、著書に『新書で入門 ジャズの鉄板50枚+α』(新潮社)など。

※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。
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