
良い医者に出会えない原因の一端は、あなたの「伝え方」にあるかもしれません。医者も人間です。限られた時間内で情報が整理されていないと、正確な診断を下すのが難しくなってしまいます。
現役医師である武井智昭さんの著書、『「寿命格差」という罠~今、必要なのはハズレ医者を見抜くスキル~』(日東書院本社)では現代の日本医療における“医者ガチャ”問題を取り上げています。本書では「ハズレ」を見極め、「アタリ」の医者を引き当てるためのノウハウを分かりやすく解説。
今回は一部を抜粋し、これだけは絶対に身につけておきたい「患者力」の基本テクニックを公開します。
患者力の基本は「自分を伝える」こと
現代の医療は、医者と患者さんの「共同作業」です。一方的に治療を受けるのではなく、患者さん自身も積極的に参加することで、より良い医療を受けることができます。
これが「患者力」の考え方です。
診察の際に、「先生にお任せします」と話す患者さんは少なくありません。しかし、謙虚な態度が必ずしも望ましい患者さんの姿勢とは言えません。なぜなら、あなたの体のことを一番よく知っているのは、あなた自身だからです。
近年の医療は情報戦とも言われます。医者が持つ専門知識と、患者さんが持つ自身の身体や生活に関する「生の情報」が一体になって初めて、満足な診断・治療・生活スタイルが成り立つのです。
限られた診察時間の中で的確な診断を得るには、できるだけ詳しく、確かな情報が重要になります。医者の知りたい情報は、主に次の4つです。診察の際には、この点を押さえて伝えるようにするといいでしょう。
診察時に医者が知りたいポイント4つ
【1】症状がいつから始まったか
症状を自覚した時のことを、「昨日から」「先週から」ではなく、「3日前の朝7時頃、目覚めた時から」のように、具体的な時間軸で伝えると、医者は病気の進行速度や発症のタイミングを正確に把握できます。
【2】どんな時に症状が悪化・軽減するか
「胃の痛みが、食事を摂って30分後に必ずやってくる」「座っている時は大丈夫だが、階段を上ると胸が締め付けられる」など、「どんな時に、どうなるのか」を伝えると、症状の原因を絞り込む上で重要な手がかりとなります。
【3】日常生活でどのような支障があるか
現状で、生活するのにどのくらい困っているのかを伝えます。次項でもお話ししますが、「頭痛で仕事に集中できない」「腰痛のせいで、孫を抱くことができず辛い」といった困りごとを具体的に伝えることは、治療の緊急度や目標を設定する際の判断材料となります。
【4】不安に思っていることは何か
「実は家族が胃がんなので、私もそうではないかと心配です」「この薬を飲むと副作用で太るのではないかと不安です」など、気がかりなことを伝えます。医者が治療に対する患者さんの感情や背景を知ることで、単に病気を治療するというだけでなく、患者さんの気持ちに寄り添った治療方針を提案することができます。
とはいえ、痛みや不快感といった症状は、目に見えず、数値などでも表しにくいものです。次に、痛みの表現方法をいくつか紹介します。医者にとっては、こうした患者さんの比喩的な表現が強力な情報源になります。
医者が分かりやすい痛みの表現の例
①激しい頭痛の場合
×「頭がすごく痛い」
○「バットで殴られたような激しい頭痛が突然始まった」(くも膜下出血などの典型的な症状表現)
②胸痛の場合
×「胸が苦しい、痛い」
○「胸が重く締め付けられるように苦しくて、痛みが左肩や奥歯にまで広がっている」(心筋梗塞の可能性を示唆する症状表現)
③胃痛の場合
×「胃がすごく痛い」
○「胃にキリキリ刺すような痛み」(胃潰瘍を連想させる症状表現)
○「焼けつくような痛み」(逆流性食道炎を連想させる症状表現)
また、「歩けないような痛み」「痛みで冷や汗が出る」という表現も、医者が緊急性の有無を判断する参考になります。
このように、患者さんが具体的に「いつから」「どのように」というポイントを詳しく伝えてくれると、医者の診断の精度が飛躍的に高まります。結果として、患者さん自身が最良の医療を受けることができるのです。
著者:武井智昭(たけい ともあき)
2002年、慶應義塾大学医学部卒業。さまざまな病院・クリニックで小児科医・内科医としての経験を積み、現在は高座渋谷つばさクリニック院長。感染症・アレルギー疾患、呼吸器疾患、予防医学などを得意とし、訪れる患者は0歳から100歳まで1日に100人以上。「1世紀を診療する医師」として研鑽を積んでいる。NHK『チコちゃんに叱られる!』、フジテレビ『めざましテレビ』、テレビ朝日『林修の今知りたいでしょ!』『ガリベンチャーV』ほか、メディア出演多数。






