
「テストの答えは合っているのに、授業で習っていない解き方だからとバツにされた……」といったように、学校現場では、テストの答えは合っていても、やり方などが授業と違うために不正解にすることがあります。
すると保護者からは、「問題を解くことよりも、教師の指示に従うことが主題になっているのではないか」「子どもの独創性や発想力の否定だ」「嫌がらせにしか思えない」といった厳しい声が寄せられることがあります。理不尽に思える採点を見て、モヤモヤした経験を持つ方も多いのではないでしょうか。
All Aboutの子育て・教育ガイド、鈴木邦明氏の著書『言い方・伝え方でこんなに変わる 保護者の相談・クレーム対応100』(学事出版)から、学校のルールと親のこだわり、その間で起きるすれ違いの真相に迫ります。
【Q:保護者からの相談】
算数の文章題で、答えはちゃんと合っているのに「掛け算の順番が逆だから」という理由で減点されました。漢字のテストでも、書き順が違うからとバツにされています。これでは子どもの勉強へのやる気がなくなってしまうと思うのですが、なぜダメなのでしょうか?
【A:子育て・教育ガイド 鈴木邦明氏の解説】
せっかく正解しているのにやり方が違うという理由でバツにされると、保護者の方が不満を抱くのも無理はありません。この問題については、「一定のルールに従って毅然と対応すべき内容」と「柔軟性を持って対応すべき内容」を分けて考えることが大切だと私は考えています。頑なに一つのやり方に固執するのではなく、バランス感覚を意識しながら取り組む必要があるのです。
漢字の書き順やとめ・はね、国の指針は「柔軟に」
もちろん、いい加減なやり方や勘で解いたらたまたま正解だったようなものは、不正解としても良いと思います。また、「算数(数学)」や「理科」などの自然科学系の教科は、決められたやり方でないと成立しない概念があり、一定のルールに従っているものが多いです。子どもが育つ中では、そうした合理的な“正解”を学ぶことも大切でしょう。
ただ難しいのは、授業で教えたやり方の一部を省略した場合や、教師が教えたやり方とは違うけれど、それなりに合理性があるやり方の場合などです。
例えば、よく槍玉に挙げられるのが漢字の書き順ではないでしょうか。文科省によると、漢字の書き順については柔軟に対応するようにと示されています。現在の国語教科書で使用される漢字の書き順には、「複数存在するもの」や「時代によって変化しているもの」もあるためです。学習指導要領においても、小学校の低学年においては「筆順」という用語が出てきますが、中学年・高学年では記されていません。そう考えると、「必ずその書き順でなければいけない」とは言えなくなります。
「とめ」「はね」「はらい」なども同じような扱いです。文化庁の「常用漢字表の字体・字形に関する指針(報告)」には、以下のように明記されています。
「長短、方向、接触の有無、はらうか、とめるか等の違いはあっても、骨組みは共通しているため、いずれも同じ漢字として認められる。字形の違いが字体の違いにまで及ばない限り、特定の字形だけが正しく、他は誤りであると判定することはできない」
「はねているか」「はらっているか」だけで正誤を判断するのではなく、全体を見て判断すべきだということです。
判断が難しい「掛け算の順番」のジレンマ
算数の「掛け算の順番」も揉めがちなテーマでしょう。
「8人にりんごをあげます。1人に6個あげます。全部でりんごは何個になるでしょう?」という問題において、「8×6」なのか「6×8」なのかという違いです。「掛ける数」と「掛けられる数」の関係から順番が決まりますが、一方で教科書では「8×6=6×8」であるとも説明しているわけです。
こうしたことを踏まえると、いずれも明確な答えが出しにくくなりますし、やはり柔軟な判断が必要です。
しかし、クラス担任や教科担任が変わると解釈も変わるというのでは、子どもたちも混乱してしまいます。「前の先生はマルだったのに、新しい先生はバツにした」ということが起きないよう、学校全体でのすり合わせも大事になってくるでしょう。
鈴木 邦明 プロフィール
神奈川県、埼玉県の公立小学校に22年勤めた後、短大、大学での教員養成、保育者養成に移り、現在に至る。現在は、大学での講義を中心に、保護者向けに子育て・教育、教員向けに授業方法・学級経営などのテーマで執筆、講演などに幅広く活躍中。






