
マンガやアニメやゲームなど、とあるコンテンツに子どもが夢中になってしまい、ひたすらそれで遊んでいる……。親として、「この子の将来、大丈夫かな」と不安を覚えてしまうこともあるでしょう。しかしその姿は未来の可能性につながっています。
瀧靖之さんの著書『夢中になれる子の脳』では、Q&A方式で「好き」や「夢中」を大切にした子どもの育て方を詳しく解説。今回は本書から一部を抜粋し、好きなことが強みになる理由をご紹介します。
子どもの視野・思考を広げてあげる
Q:うちの子(女の子)は「ポケモン」が好きすぎて、ずっと黙って遊んでいます。このままだと強めのオタクになってしまわないか……若干の不安があります。
A:「ポケモン」好きも立派な個性です! ポケモンの何が好きなのかを聞いて、お子さんの可能性を広げていきましょう(オタクであることはいいことです!)
子どもには、大人ほど人生経験がありません。よくも悪くも、「井の中の蛙、大海を知らず」の状態です。つまり、今ある環境、今打ち込んでいること、今行っているものが、「人生のすべて」「世界のすべて」に見えやすくなります。
たとえばそのような環境の中で、クラスに苦手な子が1人いたとします。子どもにとっては、それだけで、「学校がイヤになる理由」になってしまうことはあります。大人からすれば、「でもいい子もいるし、仲のいい子もたくさんいるでしょ?」なのですが、子どももそう考えているとは限りません。
自分のいる世界に1つイヤなことがあれば、イヤな世界になってしまうことがあります。人生経験の少なさゆえに、視野が狭くなりやすいんですね。だからこそ、親としては、なるべく子どもの視野が広がるようなコミュニケーションも大切になってきます。
そもそも、視野が狭いとどんなことが起きるかというと、1つの大きな問題は「挫折体験」です。たとえば子どもがサッカーをしていて、地元のクラブチームに入ってがんばっている。将来はプロになるのが夢だと言っている。素晴らしいことですよね。
ただ、先にふれたように、競争の世界では「上には上がいる」ということを誰もが思い知らされます。小学校や中学校ではキャプテンでエースストライカーだった子が、高校に入ったら補欠になってしまったということも起きます。
ずっと一番だった子が、一番ではいられなくなる。そんなときに挫折体験は起きやすくなります。「サッカーで活躍できない」=「自分はもうダメだ」と自信をなくし、やる気をなくし、「自分なんて……」と過小評価をしてしまう。
それは、とてももったいないことです。そんなとき、サッカーが好きな子には「サッカー選手」になることだけが道ではないことを教えてあげるのです。
将来の仕事に結び付けてみる
たとえば、サッカーに関わる仕事がしたいと思うのなら、コーチになる、スポーツトレーナーになる、スカウトになる、審判になる、そんな選択肢がたくさんありますよね。
新聞社やテレビ局に入って、サッカーや選手と関わる。実況者になる。イベントをプロデュースする。スポーツメーカーに入る。スパイクの職人になる。ユニフォームのデザインをする。アスリートのパフォーマンスを上げる方法や、無回転シュートのような特殊な蹴り方を分析する研究者になる。「お金持ちになってサッカーのチームを運営する!」なんてこともあるわけです。
また、「サッカーを通して培った力」が他のさまざまなことに通用するんだということを教えてあげるのも、社会を知る大人ならではのアドバイスになります。「チームを盛り上げるのが上手」「視野が広くて冷静」「ここぞというチャンスに強い」などなど、子どもの個性を通して言語化できる強みがたくさんありますね。言い換えると、サッカーという活動を通して見えてきた子どもの「オンリーワン」です。
そのような資質を活かしたら、将来どんな仕事につくことができるか?一緒に考えてみる時間があってもいいと思います。
たとえば、大きな紙を広げて、「職業マップ」のようなものを一緒につくって自由研究にしてみる、といったやり方もおもしろいかもしれません。「サッカーをしていて、一番楽しいのはどんなとき?」と、そんな質問を投げかけて、サッカーに夢中になっている理由を考えてもらうのもいいでしょう。
そのようなことをたまにやっておくと、「サッカーだけが人生じゃないんだ」ということが感覚的にも理解でき、サッカーも好きにのびのびとできると思います。将来の進路の選択も、「高校を卒業して実業団チームに入る」という道もありますが、「大学に行って専門の勉強をする」という道も見えてくるでしょう。
オタク性は可能性のかたまり
サッカーを例にしてみましたが、どんなことでも同じですね。たとえば、「本や漫画が好き」などの場合も、「漫画家になる」「作家になる」「出版社に入る」といった道だけではなく、イベントを運営する側になって本と関わる道。想像力や企画力を活かして、デザインやプランナーになる。映画プロデューサーになって、好きな本を映像にする。それこそ「自分の出版社を立ち上げる!」なんて考え方もあるでしょう。
質問にあったように、ゲームやアニメのキャラクターが大好きという場合も、ぜひポジティブに捉えてみてください。キャラクターを覚えるというのも、立派な能力であり、好奇心のかたまりです。
お子さんの様子を見て、「覚えるのが好き(記憶)」なのか、「勝つための戦略を考えるのが好き(論理思考・分析力)」なのか、「ポケモン図鑑を埋めるのが好き(継続力・達成感)」なのか、「キャラクターをつくるのが好き(発想力・想像力)」なのか、「調べたことを人に教えるのが好き(コミュニケーション力)」なのか。
具体的に何が好きなのかによって、実は使っている能力も違います。「ポケモンをしていて何が一番楽しい?」と、聞いてみてもいいですね。
そこから発展させていくと、「ただのゲーム好き」ではなく、実はあらゆる分野に活かせる特性を持っていることがわかります。その意味では、オタク的な資質とは、決して敬遠するものではなく、むしろ親としては喜ばしいことだと言えます。
人生というのは、山あり谷ありなものです。何かに夢中になり、真剣になるからこそ、挫折を感じるような体験も起きます。ただ、受験に失敗したら、就職活動に失敗したら、部活や何かの大会などで結果が出せなかったら人生が終わりなんてことは、まったくありません。
そのことを知っている私たちが、子どもたちの中にある可能性をしっかりと見てあげて、言語化して、伝えてあげる。それだけで人生の選択肢が大きく広がっていきます。「あなたはいろんなことができるんだよ」と、お子さんの持つ可能性を、ぜひ教えてあげてください。
瀧 靖之(たき・やすゆき)
東北大学加齢医学研究所臨床加齢医学研究分野教授。東北大学スマート・エイジング学際重点研究センター長。医師。医学博士。研究室では、脳の発達や加齢、認知機能の変化を、MRIを用いた大規模脳画像解析によって研究している。最新の脳研究と自身の子育ての経験をふまえ、科学的な子育てを提唱。書籍や講演、メディアを通して脳と健康に関する知見をわかりやすく発信している。






