メンタルヘルス

更年期ではなく「心のSOS」かも……強いイライラで「物を投げてしまう・物に当たる」場合の対処法

【医師が解説】「感情的になると物を投げてしまう」「物に当たってしまう」……激しいイライラが抑えられない場合、精神科的なアプローチで改善できる可能性があります。分かりやすく解説します。(※画像:Shutterstock.com)

中嶋 泰憲

中嶋 泰憲

メンタルヘルス ガイド

精神科医

慶応大学医学部卒業後、カリフォルニア大学バークレー校などに留学。留学先でのカルチャーショックから、自身も精神的な辛さを感じたことを機に、現代人のメンタルヘルスの重要性を悟りました。精神病院の現場から、みなさまの毎日の心の健康管理にお役に立てるよう、メンタルヘルスに関する情報発信を行っていきます。

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イライラしている女性
イライラが抑えられず、物を当たってしまう癖を止めたい……治す方法はある?

「イライラが抑えられず、物に当たってしまった」「口論になって、パートナーに物を投げつけてしまった」普段は冷静な人でも、そのような経験はないでしょうか? 今回は「物を投げてしまう」癖に悩む女性の実例をもとに、考えられる精神医学的背景と対処法をご紹介します。

「夫にコップを投げつけてしまった……」40代医療職女性の悩み

今回相談を受けたのは、40代後半の女性です。旦那さんと娘さんとの3人暮らしで、医療関係のお仕事をされています。職場は慢性的な人手不足により、身体的にも精神的にも大きな負荷がかかる毎日を過ごされているそうです。

この女性が現在抱えている悩みは、相手の言動にイラッとすると、思わず物を投げてしまうということ。ある日の食事中、旦那さんとの会話中に気持ちが抑えられなくなり、手元にあったコップを反射的に投げつけてしまったそうです。幸いコップは相手に当たりませんでしたが、普段は冷静な人がこのような行動をとると、ご自身もご家族もショックを受けてしまうでしょう。大きなトラブルに発展する前に、早めの対処が必要な状態だと考えられます。

「やめたいのにしてしまう」のは、心のSOSの可能性も

大きなトラブルが発生する手前の場合、精神科を受診すべきか迷う方は多いようです。人には誰にでもさまざまな感情がありますし、日によって精神状態は違うものです。してはいけない言動をうっかりしてしまい、深く反省してすぐに改めた、ということもあるでしょう。

精神科への受診の目安として、重要な判断のポイントになるのは「その言動を自分でどの程度コントロールできそうか」という点です。

もし一度限りではなく、自分でもやめたいと思っているのに繰り返してしまう場合は、感情を十分にコントロールできない状態です。年齢的に「更年期で調子が悪いから不安定」で済ませてはいけません。衝動が抑えられない場合、心身に大きなストレスがかかっていることが原因で、脳に何らかの問題が生じている可能性があります。「心のSOS」とも言える状態です。その場合は、精神科的な治療によるアプローチも考えるべきでしょう。

自分でコントロールできないような問題行動は、日常生活にも影響を及ぼしやすいものです。今回の女性の場合は、旦那さんが問題行動の背景を理解してくれ、すぐに大きな家庭の問題になることは避けられました。しかし状況によっては、家族が強い不安を感じて家を離れてしまうといった、深刻な状況に発展することもあるのです。

受診の前に試したい「物に当たる衝動」を改善するための2つの方法

もし同じような悩みを抱えていて、受診をためらっているのなら、衝動的なイライラを感じたときに少しだけ自分の行動を変えられるかを試してみてください。簡単で具体的な2つの方法があります。

まず、もしコップなどの固い物を投げてしまうことがあるなら、物を投げたい衝動がわいたときに、投げる物を「軽くて、柔らかい物」に変えることが問題解決の第一歩になるかもしれません。「物を投げてはいけない」ことは、ご自分でも十分に分かっているはずです。しかし、もし繰り返しているなら、その衝動を急に完全に抑えるのは難しいかもしれません。まずはポケットティッシュのように、できるだけ軽く、どこかに当たっても問題ない物に置き換えるところから始めるのはいかがでしょうか?

また、投げたい衝動を感じたときに、すぐさま「その場を離れる」のも有効な方法です。

最後に大切なことをお伝えします。「イラっとすると物を投げてしまう」という癖がある場合、不眠や過食、衝動買いといった、別の問題を抱えていることは少なくありません。それらも含めて、精神科で適切に対処できる可能性があります。

衝動的な言動に悩まれている方は、それが「自分でコントロールできる問題かどうか」を、一度、真剣に考えてみてください。難しいと感じる場合は、専門家の力を借りることをおすすめします。

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