メンタルヘルス

「バカ! 早くしろ!」 止められない暴言は、性格ではなく脳のせい? 衝動性を抑え社会生活を守る方法

【精神科医が解説】社会的な場での考えられないような暴言や失言は、性格の問題ではなく衝動性のコントロール不全の可能性もあります。精神医学的な視点から、問題発言をしてしまう原因と対処法について、分かりやすく解説します。(※画像:Shutterstock.com)

中嶋 泰憲

中嶋 泰憲

メンタルヘルス ガイド

精神科医

慶応大学医学部卒業後、カリフォルニア大学バークレー校などに留学。留学先でのカルチャーショックから、自身も精神的な辛さを感じたことを機に、現代人のメンタルヘルスの重要性を悟りました。精神病院の現場から、みなさまの毎日の心の健康管理にお役に立てるよう、メンタルヘルスに関する情報発信を行っていきます。

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怒っている人

レジでの待ち時間や職場でのささいなトラブルで、信じられないような暴言をぶつける人を見かけたことはないでしょうか。周りは「なんて失礼な人だ」「常識がない」と片付けてしまいがちですが、実は問題ある発言の背後には、深刻な心の問題が隠れているケースがあります。実際に、自分自身の衝動的な言動に悩み、それを精神科で相談される患者さんもいらっしゃいます。

今回は、衝動的な発言をしてしまう当事者へのアドバイスを含め、専門的な視点から問題の原因と対策法を解説します。

衝動的な暴言の原因は? 本人の意思や性格ではない「衝動性」が問題

公共の場で不適切な言葉が口から出てしまうのは、単なるマナーや性格の問題ではない可能性があります。脳による「衝動性のコントロール」に問題がある場合、心に浮かんだ攻撃的な言葉を、そのまま相手にぶつけてしまうことがあるのです。

例えばあまりに長い行列に並んでいるときや、お店側の不手際でトラブルにあったとき、心の中で「こんなに待たされるなんて」「なぜちゃんとしないんだ」と不満を抱くことは、誰にでもあるものです。しかし、通常は社会的なブレーキが働きます。実際に相手にひどい言葉をぶつけることはなく、多くの人は脳がコントロールし、ストップをかけることができるのです。では、なぜその自制が効かないケースがあるのでしょうか。

意外に思われるかもしれませんが、人に暴言をぶつけてしまう本人も、自身の言動に深く悩んでいることがあります。「今日は絶対に人に怒鳴るまい」「汚い言葉は決して言わない」と固く決意して家を出ても、混雑した場所や思わぬトラブルに出くわすと、瞬間的に気持ちの抑えが効かなくなり、言葉が勝手に漏れ出してしまうのです。これは、本人の「意志の力」だけでは制御できない領域にまで、問題が及んでいる証拠です。

「別の行動での上書き」が有効! スマホやAIを活用した「衝動の置換」とは

それでは悪い言葉をぶつけそうな衝動に襲われたとき、どのような対策法があるのでしょうか? 簡単にできて有効な解決策になるのが「別の衝動に置き換える」という手法です。

かつて過食症の権威は、「何かを食べたい衝動が現れたら、部屋をほうきで掃きなさい」と過食の衝動への対処のポイントを説きました。衝動がわいたら、違う行動に即座に置き換えるのです。

現代であれば、イラッとした瞬間にすぐスマホを開き、AIチャットに自分の感情を打ち込んだり、別のアプリに意識を向けたりするのもよいでしょう。相手に感情をぶつけるのを回避できるようになれば、現実的でスマートな対策法になるはずです。

社会生活を守るためには「誠実な謝罪」と「専門医への相談」がカギ

もし職場やお店などで、本来決して人に対して言うべきではないような言葉を衝動的にぶつけてしまっても、即座に心から謝罪できたら立派です。気まずさから、その場を離れたり、ごまかしたりしたい気持ちになるかもしれません。しかし今後の人間関係と社会生活を守るためにも、腹をくくってしっかりと謝ることをおすすめします。

自分で失敗に気付けたタイミングで、一呼吸して「申し訳ありません! つい感情が高ぶって、思いもよらないことを口走ってしまいました。深く反省しています」と誠実に伝えることです。一度口にしてしまった言葉をなかったことにはできませんが、周囲にも「本人も罪悪感は抱いているのだな」と伝わり、一定の理解を示してもらえるかもしれません。

最後に、もしこうした衝動があることで職場に行くことやプライベートの外出をためらう状態になっているなど、日常生活に何かしらの支障が出ている場合は、それを「精神医学的な問題」として正しく認識することが大切です。ADHD(注意欠如・多動症)などの特性が関係している可能性もあります。自分の性格を責めてふさぎ込むのではなく、一度、精神科や心療内科で専門家に相談してみることをおすすめします。

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