今回は、医療費・介護費が原因で老後破産になる人の特徴と、その背景、そして今からできる備えについて整理します。
リスクを「一時的な出来事」と捉え、長期的な負担を見落としている
医療費や介護費が原因で老後破産に陥りやすい人に共通しているのは、これらを「特別な出来事」「万が一の話」として考えている点です。・健康保険があるから医療費は大丈夫だろう
・介護はまだ先の話で、今は考えなくていい
・具体的な金額を調べないまま老後を迎えてしまう
定年後しばらくは体調に問題がないと、通院や介護が日常生活に直結する実感を持ちにくいものですよね。そのため、医療費や介護費を「点の出費」として捉え、長期間にわたる支出になる可能性を見落としがちです。
しかし現実には、高齢になれば何らかの医療的なケアや生活支援が必要になるのは、特別なことではありません。医療費や介護費は、数年から十数年にわたって続く「老後の固定的な負担」になりやすい支出なのです。
約10年続く「健康ではない期間」にかかるお金
ここで押さえておきたいのが、「平均寿命」と「健康寿命」の違いです。・平均寿命:生まれた人が平均して何歳まで生きられるか
・健康寿命:日常生活に支障なく、自立して生活できる期間
厚生労働省の令和6年簡易生命表の概況によると、日本人の平均寿命は、男性81.09歳、女性87.13歳です。一方、令和4年の健康寿命は男性72.57歳、女性75.45歳とされています。この差から、多くの人がおよそ10年前後、何らかの健康上の不安や制限を抱えながら老後を過ごすことが分かります。
厚生労働省の「生涯医療費」によると、令和4年度の1人当たりの生涯医療費は約2900万円。そのうち70歳以降にかかる医療費は約1361万円と、全体の約半分を占めています。
この金額には公的医療保険からの給付分も含まれているため、実際の自己負担は1~3割程度です。つまり、70歳以降に窓口で支払う医療費は、おおよそ136万~408万円が目安となります。
さらに介護が必要になると、家計への影響は一段と大きくなります。
公益財団法人 生命保険文化センターの「生命保険に関する全国実態調査(2人以上世帯)2024年度」によると、介護にかかる一時的な費用(住宅改造や介護用ベッドの購入など)は平均47万2000円、月々の介護費は平均9万円。介護期間は平均55カ月(約4年7カ月)です。※公的介護保険サービスの自己負担費用を含む。
また、介護を行った場所別に介護費用(月額)をみると、在宅が平均5万3000円、施設が平均13万8000円となっています。
その結果、
・在宅介護:平均約339万円
・施設介護:平均約806万円
という費用が発生します。医療費と介護費が重なることで、年金収入だけでは支えきれない状況に陥るケースは少なくありません。
医療費・介護費は「生活費」と切り離して準備する
老後破産を防ぐためにまず必要なのは、「なんとかなるだろう」という感覚を手放し、具体的な数字を把握することです。また、医療費については少なくとも100万~200万円ほどを目安に「医療費専用の枠」として確保しておくと、突発的な出費にも対応しやすくなります。
介護費についても、日々の生活費とは切り離し、「使う可能性が高い将来の支出」として別枠で考えておくことが重要です。
あわせて、日頃からの健康管理も現実的な老後対策の1つです。自治体の健康診断を活用し、ウオーキングやストレッチなどをして体力を維持していきましょう。
老後破産を防ぐ最大のポイントは、「いつか考える」ではなく「元気なうちに想定する」こと。数字を把握し、医療費と介護費を分けて準備しておくことが、老後の家計を守る現実的で確実な方法です。








