聴き手の心を動かす「話の始め方」とは?
会議やプレゼンの場において、最初の3秒で聴き手を惹きつける人がいます。
『その言語化は一流、二流、それとも三流? 頭のいい“この一言”』(清水克彦 著/青春出版社)では、共感を生む“語り出し”のコツを解説しています。
今回は本書から一部抜粋し、聴き手の心を動かす「話の始め方」を紹介します。
【プレゼン】三流は「あれもこれも話す」、二流は「笑いで飽きさせない」、一流は?
大勢の人たちを前にしたものの言い方、言い換えれば、聴衆を引き込む話し方について述べていきます。
A「たくさんの人の前で話すのだから、あれもこれも話したい」
B「たくさんの人の前で話すのだから、退屈させず笑いも出るような内容にしたい」
C「たくさんの人の前で話すのだから、一番伝えたいと思っていることを全員に持って帰ってほしい」
普通はAのように考えます。しかし、会議の冒頭での1分程度のあいさつであれ、講演のような90分サイズのスピーチであれ、いくつも要素を盛り込んでしまうと散漫になります。
聴衆を引き込むには、Bのようにユーモアや冗談を組み込もうとする姿勢は悪くありません。ただ、それではまだ二流で、面白さを重視するあまり、重要なことが伝わらなくなる恐れがあります。
ですから、スピーチをする前の心構えとしてはCが理想なのです。「プレゼンテーションで伝えたいことは1つに絞る」という姿勢です。
■スピーチやプレゼンテーションでもっとも重要な内容を伝えるときの表現
・「きょうは、これだけ覚えて帰ってください」
・「よろしいですか? ここから大事なことを申し上げます」
・「ここから話す内容、絶対にSNSで流さないでくださいね」
【決めの一言】「きょうは〇〇が一番重要です」
一番伝えたいこと、一番決めておきたいことを明確にする
【語り出し】三流は「緊張して早口になる」、二流は「聴衆に語りかける」、一流は?
大勢の人たちの前で話すときは誰しも緊張するものです。緊張すれば、声がうわずったり震えたりするだけでなく、話すスピードも早くなります。また、視線も泳いでしまい、どこを見て話しているのかわからない状態になってしまいます。
ただ、社会人として年数を重ねれば重ねるほど、説得力や信頼感、それに重厚感まで求められるようになりますから、たとえ緊張していても、聴衆から「あの人、ガチガチになっている」と気取られないようにしたいものです。大切なのは語り出しです。
A「ご紹介いただきました○○と申します」
B「きょうは暑いですね。ご紹介いただきました○○と申します」
C「きょうは暑いですね。(間)ご紹介いただきました○○と申します」
Aは普通のパターン。緊張していると「いただきました」が早口になって滑舌が悪くなり、「いららきました」と発音してしまいます。そのことで「今の自分は緊張している」と再確認し、余計に緊張が増幅されたりします。
Bは「暑いですね」と聴衆に語りかけることによって、自分自身に余裕を持たせています。
Cは、「暑いですね」と「ご紹介いただきました」の間に、あえて「間」を作り、ゆったりと語り始めることで自分を落ち着かせる方法です。
「間」は、聴衆に「おやっ?」と思わせ、こちらの話に引き込むだけでなく、話をゆったり始め、自分のペースにもっていく効果もあります。
もう1つ大切なのは視線です。誰に向かって語るか、そのときの視線はどうするのかで、聴衆への伝わり方は大きく変わります。
聴衆の数が10人であれ、数百人であれ、全員と目を合わせる感覚で臨むことです。目が合えば、一人ひとり、確実にメッセージを伝えやすくなります。
■プレゼンテーションで視線を有効に使う方法
1. 会場全体、会議室全体をざっと見渡す
2. ローマ字の「Z」をイメージし、会場の左後方→右後方→左前方→右前方の順で視線を動かせる
3. ブロックごとに聴衆と目を合わせていく
【決めの一言】「きょうは暑いですね。(間)、ご紹介いただきました…」
「話」→(間)→「話」で(間)を重視しよう
この書籍の著者:清水克彦 プロフィール
政治・教育ジャーナリスト、びわこ成蹊スポーツ大学教授。愛媛県今治市出身。早稲田大学大学院公共経営研究科修了、京都大学大学院法学研究科博士後期課程満期退学。文化放送入社後、政治記者、ベルリン特派員、米国留学を経て、ニュースキャスター、大妻女子大学非常勤講師、報道チーフプロデューサーを歴任。専門分野は「現代政治」と「国際関係論」。大学ではキャリアセンター長を務め、メディア出演、オンライン記事の執筆や講演など幅広く活動中。ベストセラー『知って得する、すごい法則77』(中公新書ラクレ)ほか著書多数。






